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【質問】 トイレが近く安眠できない

 20代の女性です。血行が悪いため冷え性になるのか、幼少のころからトイレの回数が多く、夜中にも行きます。このためぐっすりと眠ることができません。治す方法はないでしょうか。



【答え】頻尿 -心理的要因の関与も-

麻植協同病院 泌尿器科部長 橋本 寛文

 ご相談のように排尿回数の多いことを頻尿と呼びます。一般に昼間8回以上、夜間、寝床に就いてから2回以上トイレに行くようであれば、頻尿と考えてよいでしょう。しかし、病気がすべての頻尿の原因となっているわけではありません。

 例えば、水分の取り過ぎ(ビールを飲めば近くなる)や、緊張(試験の開始前に近くなる)などが原因となることは、よく経験されるでしょう。

 臨床で扱う頻尿は大きく2つに分けられます。一つは下部尿路(膀胱(ぼうこう)、尿道)に異常がある場合、もう一つは元になっている病気(異常)が証明されずに、ただ頻尿症状だけを訴える場合です。

 前者の頻尿の原因としては、1.膀胱が小さい(このため、すぐいっぱいになる)。例えば、種々の原因で膀胱が小さくなる萎(い)縮膀胱や巨大な子宮筋腫(しゅ)、卵巣嚢腫(のうしゅ)による膀胱の圧迫などで起こります。2.膀胱が弱い(排尿の力が弱く、出きらないで残っている尿が多いと、新しい尿が少し加わっただけでもいっぱいになる)。例えば、男性では前立腺(せん)肥大症がよく知られていますが、子宮がんや直腸がんの根治手術を受けた後、あるいは脳卒中の後遺症や糖尿病の神経障害でも起こります。

 このほか、3.膀胱が不安定(膀胱の神経が興奮しやすくなっていると、少したまっただけでもしたくなる)。不安定膀胱はさまざまな原因がありますが、神経学的な異常によるものとそうでないものがあります。4.膀胱が刺激状態にある(炎症などが存在すると、排尿筋を収縮させてしまう)。例えば、急性膀胱炎や膀胱結石などでは、膀胱粘膜の刺激により絶えず尿意があり、結果として頻尿となります。5.尿道が狭い(尿道が狭いと2.と同様に残尿が多くなる)などがあります。

 後者は、神経性頻尿もしくは心因性頻尿と呼んでいるもので、不安定膀胱の中で神経学的に異常のないものと一部重なります。

 あなたの場合はお若いので、原因となるような重い疾患はないように思われます。ご質問の内容だけからすべてのお答えはできかねますが、心理的要因が関与しているのではないかと思われます。

 膀胱は心の鏡といわれているように、排尿には心理的要因が関与しています。一般的に、興奮するか緊張した状態では、膀胱は過活動となり、頻尿や尿失禁を起こしますが、逆に打ちひしがれた状態では膀胱機能は低下し、まれに尿が出なくなることさえあります。

 あなたの場合、それほどひどくないようですので、治療により改善すると考えられます。

 治療の中心は膀胱訓練と薬物療法です。膀胱訓練は、通常の排尿間隔と最大の1回排尿量を記録し、その時間と量を少しでも上回るように目標を立てて努力していただきます。併せて膀胱の収縮力を減少あるいは膀胱容量を増加させる薬物を服用します。いずれにしても、排尿障害の診療は、問診と前述の基礎疾患の有無が重要となりますので、一度専門医にご相談することをお勧めします。

 最後に、冷え性と頻尿の因果関係は、はっきりと証明されてはいませんが、体調がよくないと排尿障害も起こりやすくなります。ですから冷え性を治すことも大事だと思います。冷え性にはある種の漢方薬に効果が認められていますので、専門医にご相談されてはいかがでしょうか。また、夜間頻尿の原因として、腎機能の低下が見逃されやすいことを付け加えておきます。

徳島新聞2001年4月15日号より転載

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