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【質問】 無症状だが数増えた筋腫

 40代前半の女性です。昨年、内診で子宮筋腫(きんしゅ)が3~4カ所見つかりました。大きいもので約2.5センチ、その他はごく小さいようです。痛みも出血もなく様子を見ていました。半年後に再診したところ、大きくなってはいないのですが、数が増えているとのことでした。薬は飲んでいません。このまま放置しておいていいのでしょうか。漢方薬がよいと聞いたことがあります。また、開腹せずに筋腫を取れるそうですが、どの程度まで可能でしょうか。私は結婚していますが、子供は産んでいません。



【答え】 子宮筋腫 -小さな切開で摘出可能-

徳島市民病院 産婦人科診療部長 吉本 忠弘

 子宮筋腫の芽となる細胞が性成熟期になると、卵巣からの性ステロイドホルモンの作用を受けて筋腫として発育、増大します。筋腫は単発性よりも、多発性のものが多いようです。

 筋腫は正常な月経周期の人に多く、初経の早発化により、若年層にも増える傾向がみられます。30歳以上で20-30%、40歳以上では40%の女性にみられ、未産婦の方が、筋腫発生率は高いようです。閉経や去勢によって筋腫は縮小します。

 〈図〉のように、筋腫は発生する場所によって子宮体部筋腫と頚部(けいぶ)筋腫とに分けられます。さらに、発育する方向によって漿膜(しょうまく)下筋腫、筋層内(壁内)筋腫、粘膜下筋腫、靭帯(じんたい)内筋腫などに分類されます。そのうち茎を持って発育するものを有茎性漿膜下筋腫、有茎性粘膜下筋腫と呼び、子宮腔(くう)から膣外に出たものを筋腫分娩(ぶんべん)といいます。

 発生した筋腫は、変性といって、出血して赤くなったり、壊死(えし)したり、脂肪状になるなど、状態が変化することもあります。

 筋腫は症状のない場合が多いのですが、発生場所や大きさ、変性の状態によって、過多月経や貧血、疼痛(とうつう)を起こしたり、さまざまな圧迫症状(頻尿、尿漏、尿閉、便秘、腰痛など)、下腹へのしこり感、おりものが増えることなどがあります。また、習慣性流産や早産、あるいは不妊症の原因になることもあります。

 通常の婦人科診療法に超音波検査、MRI検査、子宮鏡検査などを加え、発生場所、発育方向、子宮内膜などとの関係、変性の有無を明らかにします。さらに他の婦人科腫瘍(しゅよう)との鑑別をしてから、筋腫の治療をする必要があるかどうかを決定します。

 経過観察だけでよい場合と、薬物療法、手術が必要な場合があります。

 ご質問によると、あなたは40代前半で、3~4カ所に筋腫があり、最大のものでも2.5センチ径。その他はごく小さく、半年後の再診では数が増えたが増大傾向はなく、まったく無症状です。このため、あなたの筋腫は漿膜下あるいは筋層内筋腫か、卵管間質部近くの筋腫で、変性のないものと思われます。

 今後、出産を望まなければ、4-6カ月ごとに筋腫増大の有無を検診しながら経過をみるだけでもよいでしょう。増大傾向があれば、Gn-RHアゴニストと呼ばれる薬剤を用いた薬物療法や手術を行う必要があります。また漢方薬の桂枝茯苓丸(けいしぷくりょうがん)を投与して、筋腫の増大を防いだり、縮小を期待する方法もあります。

 出産を望まれる場合、筋腫以外の不妊因子がなければ、子宮筋腫の摘出手術をしてください。術後の妊娠率は非常に上がります。この手術では、おなかを大きく切開しなければならないケースもありますが、腹腔鏡下で専門器具を使った手術なら、非常に小さい切開で、かなり大きい筋腫も摘出できます。

 もし粘膜下筋腫で、30-50%が子宮腔に突出していれば、子宮鏡を用いた手術で摘出することは可能です。いずれにしても筋腫の存在場所を精査し、治療の方針を決めたらよいと思います。

 なお、子宮筋腫と子宮内膜がんが合併している場合があったり、急速に増大する筋腫の中に、まれに子宮平滑筋肉腫や内膜間質肉腫などもありますから、放置する場合でも、必ず定期的な検査を受けられることをお勧めします。

徳島新聞2000年7月2日号より転載

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