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【質問】 治らない左の耳

 67歳の主婦です。昨年末から左の耳がザーザー、ジージーと鳴ります。耳鼻科で検査をしていただき、飲み薬をもらいましたが、耳鳴りは治りません。ある人は点滴をしたら治ると言い、別の人は耳でなく、頭が鳴っていると言います。今は耳鼻科へ行くのをやめています。左耳は何年も前から聞こえにくくなっていますが、右はよく聞こえます。目も右の方がよく見えます。新聞の字もメガネをかけずにみんな読めます。新聞が裸眼で読めるので、みんなびっくりしています。一生、耳鳴りは治らないのでしょうか。手術はとても怖いです。何が原因で耳が鳴るのか教えて下さい。



【答え】 耳鳴り -聴神経腫瘍か確認を-

徳島市民病院 耳鼻いんこう科医長 高石 司

 一生のうちに、耳鳴りを経験しない人は皆無に等しい、といわれています。非常に一般的な症状で、耳鳴りで悩んでいる人はたくさんいます。

 しかし、残念なことに、検査法、治療法はまだ確立されていません。これは、一部を除いて、耳鳴りという病気の症状や発生のしくみが必ずしも明らかになっておらず、さらに、耳鳴りを心電図や脳波のように客観的にとらえる検査法がまだ確立されていないことが挙げられます。

 患者さんの多くはどうして耳鳴りがするのか、どこが悪いのかと質問されます。音は外耳道を通って中耳、内耳、脳へ伝わっていきますが、耳鳴りは外耳から脳までのこの経路のどこかの障害で起きると考えられます。

 例えば、外耳では外耳炎、異物、中耳では中耳炎、内耳ではめまいの病気で難聴や耳鳴りを伴うメニエール病、突発性難聴、老人性難聴など。脳では脳動脈瘤(りゅう)、動静脈奇形、脳腫瘍(しゅよう)などがあります。しかし、どんな耳鳴りで、どこに障害があるのかを的確に診断することは、まだ不可能です。

 では、耳鳴りに対して、どのように対処したらよいのでしょうか。

 まず、耳鼻咽喉科で診察を受け、耳の病気があるのかどうか判断してもらうことをお勧めします。心配のない耳鳴りであることが分かったなら、耳鳴りを無視するか、受け入れてもらえばよいと思います。原因が分かっている人で気にならないのなら、そのまま経過を見るだけで良いでしょう。

 しかし、原因のはっきりしない耳鳴りは、生命にとって危険な場合があります。その代表的なものが脳の疾患と高血圧です。脳の疾患では、特に聴神経腫瘍が問題になります。この疾患の多くは左右どちらか一方の側の難聴、耳鳴りで発症します。聴神経腫瘍の診断は、MRIなどの画像診断で行われます。

 これまでお話ししてきたように、耳鳴りの治療はその原因の多くが不明なため、試行錯誤的に行われているのが現状です。〈別表〉に示したように治療法は多くありますが、決定的な方法はありません。

 耳鳴りは疲労やストレス、睡眠障害などでひどくなることもあります。これは、耳鳴りそのものに変化が現れたのではなく、聴覚系で抑制する働きが悪くなったためと理解できます。

 質問の答えですが、耳鳴りのある側には難聴もあるようです。まず専門医を訪ね、聴神経腫瘍といった生命に危険な耳鳴りでないことを確認しておく必要があります。心配しなければならない原因がないなら、耳鳴りを受け入れて無視していただきたいのですが、困難なら内服薬の服用となります。難聴が気になるのであれば、補聴器を使うことも考えてみてください。

《耳鳴りの治療法》

内服薬:ビタミン剤、循環改善剤、ステロイド、抗てんかん剤、抗不安剤、筋弛緩(しかん)剤、抗うつ剤、漢方薬

中耳腔内局所薬剤注入療法:鼓膜に注射針を刺し入れて中耳腔に薬剤を注入する

耳鳴りマスカー:補聴器のような器械から雑音を発生させ耳鳴りのある耳に聞かせる

電気刺激自律訓練療法およびバイオフィードバック法:ストレス・筋肉の緊張をとることにより耳鳴りをコントロールする

徳島新聞1999年4月11日号より転載

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