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【質問】 おしっこがもれてしまう

 54歳の主婦です。このごろ、重い荷物を持ち上げたり、くしゃみをしたりしたとき、おしっこを漏らすことがあります。恥ずかしいのですが、少量ではなく、下着がぐっしょりぬれて着替えなくてはならないほどです。年をとると、よくある症状らしく、近くの仲のいい奥さんも私と同じような症状があり、だれにも言えず、ひそかに悩んでいたようです。ふだんは家にいるので、それほど深刻ではありませんが、外出先や旅行先で下着をぬらしたときなど、とても困ります。それで、ついつい出不精になってしまいます。毎日のように濡れることもあれば、週に1回程度のこともあります。何科を訪ねたらいいのでしょうか。また、どんな治療を受ければ治るのでしょうか。



【答え】 腹圧性尿失禁 -毎日、筋肉鍛える運動を-

宇都宮皮膚泌尿器科 副院長 宇都宮 正登(徳島市吉野本町) 

 相談の症状は、尿失禁の分類の中で「腹圧性尿失禁」と呼ばれるタイプのものと思います。程度の差はあれ、中年以上の女性の多くによく見られるもので、恥じるべきことではありません。

 このタイプの尿失禁は、妊娠、出産、老化などが原因で、骨盤内の臓器を支え、尿道を締める働きをしている骨盤底筋といわれる筋肉が弱まることによって起こります。そして、くしゃみをする、階段を昇る、重いものを持つなどの動作で腹圧がかかることにより、思わず尿が漏れてしまうものです。座ったり、寝ているとき(安静時)にはほとんど洩れません。このタイプの尿失禁は男性に少なく、ほとんどの場合、女性に見られます。

 治療は、弱まったこの筋肉群を鍛える運動(骨盤底運動)をすることが基本になります。骨盤底筋群とは、おならを我慢するとか、尿を途中で止めるときに使う筋肉で、泌尿器科で相談すれば、骨盤底筋群に関するパンフレットが手に入ると思います。

 簡単に説明しますと、まず肛門から膣、尿道にかけてゆっくり息を吸いながらギューと締め上げます。この状態で、10秒~15秒保持し、元に戻します。これを1日10分間程繰り返します。

 この運動をうまく日常生活に取り入れ、あきらめずに続けることが重要です。症状の軽い人は、これだけで良くなることがあり、早ければ2~3週間で効果が出てくると思います。肥満、便秘などは尿失禁を悪化させるので注意してください。

 しかし、尿洩れパッドなどがなければ生活できないような症状の重い人は、先の運動に加えて、尿道を締める薬などの服用や手術が必要になることがあります。

 薬には動悸(どうき)などの副作用が出る場合があるので、必ず泌尿器科医に相談してください。手術療法は、おなかを切らずに行う手術が主流で、最近は内視鏡を使って、コラーゲン(結合組織の主要成分になる蛋白質繊維)をぼうこうの出口に注入する手術も保健が適用されます。コラーゲン注入法は入院期間もほとんどなく、すぐ日常生活に戻れます。

 尿失禁は、ほかに「切迫性尿失禁」と呼ばれるタイプもよく見られます。尿意を感じたら我慢できず、漏らしてしまうという尿失禁です。この場合、ぼうこうの過度の緊張を静める薬を使いますが、ぼうこう炎などの炎症でも引き起こされるので、原因になっている疾患の治療も同時にする必要があります。まれですが、ぼうこうガンなどの合併症として尿失禁を起こしている場合もあります。

 いずれにしても、尿失禁はさまざまな原因で起こりますので、恥ずかしがらずに泌尿器科専門医の診断を受け、どのタイプの尿失禁かを見極めて、それにあった治療を受けることが大切です。前向きの姿勢で治療を受け、快適な毎日を過ごしましょう。

徳島新聞1998年11月15日号より転載

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