【質問】頻尿で日常生活に支障
60代の男性です。尿が出にくくなり、頻尿や残尿感の症状が出てきました。最近は頻尿の影響で睡眠不足になり、日常生活に支障を来してきたので病院に行くと「前立腺肥大症」と診断されました。症状の進捗(しんちょく)によって薬物療法や手術などの選択肢があると聞いています。詳しい治療法を教えてください。
宇都宮皮膚泌尿器科 宇都宮正登院長
【答え】症状に見合った治療を
前立腺とは、膀(ぼう)胱(こう)の出口にある男性特有の臓器です。精液の一部を作り、勃起などにも関与している大切な臓器ですが、通常、クリの実ぐらいの大きさの前立腺が、加齢とともに大きくなり、尿の流れの邪魔をすることによりさまざまな障害を起こします。これが前立腺肥大症です。
症状としては、尿の勢いが弱くなり、スッキリと最後まで出なくなります<図参照>。尿を我慢しづらくなったり、夜の尿の回数が増えて睡眠障害などを来したりすることもあります。治療は「尿の出を邪魔している前立腺を小さくして、尿の出をスムーズにする」ことに尽きます。
治療方法は<1>内服療法<2>手術療法<3>対処療法-に分けられます。内服療法は、緊張した尿道を広げて尿を出やすくする、α1ブロッカーというお薬が基本となります。さらに、大きくなった前立腺を徐々に小さくする作用を持ち、勃起不全などの副作用の少ないお薬も使用できるようになりました。
昔から使用されている漢方薬も効果のある場合があります。このような薬剤を組み合わせることによって症状の緩和を図ります。
手術療法は、内服治療では「十分な効果が見られない」「全く尿が出なくなってしまった」など、より強い症状の方に勧められます。通常は、おなかを切らずに内視鏡で見ながら、大きくなった前立腺を削り取る経尿道的前立腺切除術という方法が行われます。
切除には、高周波電気メス、レーザーなどが使われますが、1週間程度の入院が必要です。手術後の再発はほとんどなく、安全で効果の高い治療法です。
最後の対処療法は「内服では治療効果がない」「さらには手術もできない」といった方に行われるカテーテルによる排尿管理、あるいは「ステント」と呼ばれる金属のコイルを尿道に埋め込む方法があります。
いずれの治療法を選ぶかは、患者さんの状態、希望、さらには前立腺の大きさなどによりますが、個々の状態に合った最適な治療法を選ぶことが重要です。泌尿器科専門医と相談の上、ご自分にあった治療法を選択し、快適な毎日を送ってください。