【質問】胆のう摘出手術を検討
40代の男性です。昨年、人間ドックで胆石が見つかりました。単身赴任中だったので、そのままにしていましたが、後々のことも心配なので胆のうを摘出しようと考えています。今のところ痛みはありませんが、手術後の体調がどのようになるのか気になります。手術以外の選択肢についても考えたいので、ご意見をお聞かせください。
徳島大学病院消化器内科 郷司敬洋外来医長
【答え】無症状なら経過観察を
胆石症というのは胆道に結石ができることを言いますが、発生場所により、胆のう結石、総胆管結石、肝内結石に分けられます。胆道とは、肝臓から作られた胆汁が十二指腸へ流れ出るまでの通り道のことです。質問された方は、胆のう結石がたまたま人間ドックで見つかったが、今まで胆石による症状はないということですね。
まず、胆のうに結石がある場合にどのような症状が出てくるかというと、胆石発作といわれる、みぞおちから右脇腹にかけての痛みや急な嘔(おう)吐(と)、急性胆のう炎という細菌感染に伴う高熱などが挙げられます。
また、結石が総胆管へ移動すると、黄(おう)疸(だん)や重症な胆管炎を生じる場合があります。このような症状がある場合は治療が必要になります。手術の場合、今では多くの人が腹腔鏡で、より低侵襲に胆のう摘出術を受けることができます。
腹腔鏡とは、おなかに1センチの切開を4カ所ほど開け、細長い器具を挿入してカメラで見ながら胆のうを取る方法です。腹腔鏡での手術が難しい場合は、初めから、あるいは腹腔鏡手術の途中から、開腹手術になることもあります。
摘出術を行った後、体に対する影響はほぼありませんが、排便回数が増えたり下痢になったりすることがあります。また、胆のうを取ったにもかかわらず、胆石発作のような症状を繰り返す場合もまれにあります。
手術以外の治療として、結石を溶かす内服薬(ウルソデオキシコール酸など)があります。ただし、レントゲンやCTで結石が写らないような、コレステロールが主成分の結石にのみ効果が期待できます。長期間内服しても完全に結石が溶けてなくなる人は3割程度といわれています。
一方で、そういった症状が一生にわたり全く起こらない人も多く見受けられます。無症状の胆のう結石を放置していた場合、重症な合併症(急性胆のう炎・胆管炎といわれる細菌感染、黄疸、膵(すい)炎(えん)など)が生じる可能性は年1~2%の確率です。
また、結石が長期間にわたって胆のうの壁を刺激し、将来、胆のうがんになる危険性が増加することが危惧されていますが、それほど高い頻度ではないようです。したがって、今までに胆石による症状があれば治療が勧められますが、無症状の胆のう結石は原則として無治療で経過観察します。
半年から1年に1度、超音波(エコー)などの画像検査を受け、結石や胆のうに変化がないかどうか定期的に診察されることをお勧めします。結石が大きいとか数が多いとか、あるいは胆のうの壁が厚くてがんの合併が疑われるような所見があるならば、無症状でも手術が検討されることがありますので担当医と相談してください。