【質問】口内に鼻水が流れ込む
60代の女性です。鼻水とくしゃみが出て、寝ていると右側の鼻が詰まります。病院で血管運動性鼻炎と言われました。約20年前から続いている症状なのですが、昨年末からは、右側の鼻から口の中の上あごに鼻水が流れてくるようになりました。さらに今春、熱かぜをひいて鼻を強くかんでいると、ますます口の中に流れ出し、鼻から鼻水が出なくなりました。上あごに粘い鼻水が張り付いているときと、上あごから口の中に鼻水が流れ込むときがあり息苦しいです。治す方法はあるでしょうか。
かしま耳鼻咽喉科クリニック 加島健司 先生
【答え】薬物と手術で治療を
くしゃみ、鼻水、鼻詰まりは、体への異物の侵入を阻止し、排除しようとする防御のメカニズムです。これらの症状が過剰に現れた状態を鼻過敏症といいます。鼻過敏症には、アレルギー性鼻炎と血管運動性鼻炎の二つがあります。
鼻の粘膜を舞台にアレルギー反応が起こるのがアレルギー性鼻炎で、繰り返す発作性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まりの三つが主な症状です。
血管運動性鼻炎は、アレルギー反応の関与が証明できないため原因がはっきりしないものの、鼻粘膜の自律神経の異常によって、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりといったアレルギー性鼻炎と同じ症状を示す病気です。
アレルギー性鼻炎は、鼻から吸い込まれた抗原が、鼻の粘膜でアレルギー反応を起こして発症することから、空気中を浮遊している抗原が原因となります。代表的な抗原はハウスダスト(室内のほこり)やダニ、花粉などです。
それに対して、血管運動性鼻炎は、特定のはっきりした原因が不明です。しかし▽外気の急激な温度変化(暖かい部屋から出て外の冷たい空気に触れるなど)▽たばこの煙や化粧品の吸入▽飲酒▽精神的ストレス▽妊娠-などが刺激となり、鼻の自律神経の働きが異常になって起こると考えられています。
アレルギー性鼻炎の治療では抗原の除去・吸入回避が重要ですが、血管運動性鼻炎は、アレルギー反応で起こっているものではないので、症状を抑える対症療法が主体になります。
薬物治療では、抗ヒスタミン薬や漢方薬などの内服薬、副腎皮質ホルモンや抗ヒスタミン剤が含まれる点鼻薬が主に使われます。
薬物療法に効果を示さない場合は手術療法を行うこともあります。鼻詰まりに対しては、鼻粘膜の一部を固める電気凝固術やレーザー手術、鼻粘膜の一部を切り取る鼻粘膜切除術などがあります。また鼻水に対しては、副交感神経を遮断する後鼻神経切断術が行われることもあります。
さて、ご質問の女性はもともと血管運動性鼻炎があり、かぜをひいたことによって鼻の炎症が起こり、上あごに粘い鼻水が張り付いたり、上あごから口の中に鼻水が流れ込む(後鼻漏)ことが多くなったりしたものと推測されます。
このひどくなった後鼻漏は、鼻の吸引処置やネブライザー療法、内服薬などによる治療を根気よく続ければ、良くなるものと考えられます。
血管運動性鼻炎に関しては▽ストレスをためない▽睡眠不足にならない▽アルコールを飲み過ぎない▽たばこの煙やほこりを吸わない▽規則正しい生活とバランスの取れた食事を心掛ける▽適度な運動をして体力を付ける-などの点に注意し、症状を悪化させない努力も大事です。
完治するのはなかなか難しいですが、耳鼻咽喉科専門医とよく話し合い、その方に合った治療やアドバイスを受けることをお勧めいたします。