【質問】声がかすれる
50代の男性です。時々、声がかすれたようになります。大声を出しているわけではなく、たばこも吸っていません。何ともないときもあるのでそのままにしているのですが、声がかすれてきたタレントが喉を手術したなどと聞くと不安になります。
武田耳鼻咽喉科 武田直也先生
【回答】喉に潤いと安静を
自分の声が変わってしまうと誰でも不安になるものです。人間は知らないうちに声と記憶を関連付けています。それは、声を聞くだけでその人が誰なのかが分かってしまうことからも理解できます。もちろん自分の声についても同じです。おそらくこの男性はいつもの自分の声ではない、かすれた声を聞いてしまったために不安がよぎったのでしょう。
私たちは、喉の中にある声帯というひだを肺から送り出される空気で振動させ、声を出しています。声帯が規則的に振動するためには、声帯の内側がまっすぐであること、声帯が柔らかいこと、そして声帯が適度に湿っていることが必要です。
大きな声を出したときには声帯に大きな負担が掛かります。また小さな声でも、長い時間声を出し続けたときは同じことが起こります。この男性は大きな声を出していないようですが、普通の話し声でも長時間話し続けるときは注意が必要です。
もし声帯を休めることを忘れて声を使い過ぎると、声帯が正常に振動するための条件が崩れていきます。声を出せば声帯は疲労するということを常に意識するようにしましょう。
たばこは吸わないとのことですが、周りのたばこの煙を吸い込む受動喫煙によるさまざまな健康被害も報告されています。自分の周囲の状況にも常に気を配るようにしたいものです。
声がかすれないときもあるということから、しばらくすると声帯が元の状態に戻っている可能性があります。しかし声をよく使う環境にあると、次第に声帯に疲労がたまって声のかすれが元に戻らなくなるかもしれません。声を使い過ぎたと感じたときは、声を出さないようにして喉を休める習慣をつけるようにしましょう。
あまり声を使っていないにもかかわらず声がかすれるときは、喉が乾燥している可能性があります。水を飲む、のどあめをなめる、マスクを掛けるなどの方法で加湿しつつ、喉を休めるようにしましょう。このようにしても声のかすれが治らないときは、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
また、病気が原因で声が変わることもあります。気管や肺の病気によって吐き出す息が少なくなると声は弱々しくなります。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎によって、声を響かせる鼻腔に異常が起こると声色が変わります。
声帯が動かなくなって声が変わることもあります。大きく息を吸い込んで、できるだけ長く声を出したときに、その時間が10秒に満たない場合は声帯の動きが悪くなっている可能性が考えられます。
最後に、声が持っている大切な役割についてお話します。声によって人の印象は大きく変わります。明るい声を出せばその人は輝いて見えますし、柔らかい声を出せばその人は優しく見えます。つまり声は、その人をそのまま表現しているのです。このような声の役割を意識して、自分の声の出し方をもう一度見直してみましょう。