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【質問】「卵巣嚢胞」と診断された

 60代前半の女性です。健康診断で「卵巣嚢胞(のうほう)」と診断されました。2センチくらいの大きさとのことで、あらためて病院で検査したところ「悪性ではない」と言われ、3カ月ごとに受診することになりました。今のところ大きさに変化はないそうです。卵巣嚢胞とは、どういったものでしょうか。


 

徳島大学病院産科婦人科 阿部彰子先生


 
  【回答】定期検診で経過観察
 
 卵巣は子宮の左右に一つずつあり、通常は2~3センチくらいの大きさで、骨盤深部に存在しています。この卵巣に腫れが生じた状態を卵巣腫瘍といいます。卵巣嚢胞(卵巣嚢腫)は卵巣腫瘍の一種で、子宮筋腫と並んで最も発生頻度が高い婦人科腫瘍の一つです。
 
 卵巣に腫瘍が発生する確率は、女性の全生涯でみると5~7%程度とされ、他のどの臓器よりも多種多様な腫瘍が発生します。その中で良性から悪性までさまざまな腫瘍が存在します。2センチの卵巣嚢腫もあれば、20センチまで大きくなって見つかるものもあります。
 
 あまりに大きくなると腹部膨満や下腹部痛、頻尿などの腹部症状がでてきますが、小さいうちは無症状で経過します。このため、2センチの卵巣嚢胞があるあなたは、卵巣嚢腫による症状はないと考えられます。そして、卵巣嚢腫は健康診断の超音波検査で診断されたのではないでしょうか。
 
 超音波検査ですが、その良性・悪性の正診率はおおよそ90%です。卵巣腫瘍が嚢胞状(袋状)の場合の多くは良性腫瘍ですが、充実成分(かたまり部分)がある場合は悪性腫瘍や境界悪性腫瘍が疑われます。その場合は、精密検査として、腫瘍マーカー(血液検査)やMRI(磁気共鳴画像装置)検査が行われます。
 
 話は戻りますが、卵巣嚢腫の「嚢」は、袋という意味で、卵巣の中に袋ができて液体がたまって嚢胞状の腫瘍になったものです。腫瘍というと、イコールがん(悪性腫瘍)をイメージされる方がいますが、医師は良性のものも「腫瘍」と呼ぶので、びっくりしないでくださいね。
 
 そして、卵巣嚢腫は腫瘍にたまった中身によって主に四つに分類されます。<1>漿液(しょうえき)性嚢胞…中身はサラサラした液体で、最も多くみられるタイプです<2>粘液性嚢胞…ネバネバした粘液が中身のものです<3>内膜症性嚢胞…いわゆるチョコレート嚢胞です。中身は血液で、月経痛の原因となったりします<4>皮様嚢腫…中身はドロドロした脂肪や髪の毛、歯や骨などが入っている腫瘍で、若い方にみられます。
 
 また、その他に月経のある女性では排卵による影響で機能性嚢胞という卵巣の水膨れができることがあります。この場合は、自然に縮小していきます。しかし、閉経を迎えているあなたは、自然に小さくなることはまずありませんので、今後大きくならないか「定期検診が必要」とした主治医の先生の判断は正しいと考えます。
 
 大きくなったり、見え方に変化(充実成分が出てくるなど)があったりする際は、本当に良性かどうかの診断をするために手術が必要となることもあります。いずれにせよ、検診を続け、主治医の先生とよくご相談なさることをお勧めします。

 

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