【質問】ほくろがズキズキ痛む
20代女性です。左胸の近くに5ミリ程度のほくろがあります。色は黒っぽく、ぷくっと膨らんでいます。ほくろは皮膚がんになることもあると聞き、過去に皮膚科を受診したこともありますが、問題ないとのこと。切除するにも心臓の近くなので大変と言われました。ただ、チクチク、ズキズキと痛む時があるので心配です。ほくろがどのような状態になれば注意が必要か、対処法はあるのか、教えてください。
徳島赤十字病院形成外科 長江浩朗 先生
【答え】悪性黒色腫の可能性低い
ほくろは、医学的には「色素性母斑」と呼ばれます。メラニンを産生する色素細胞とよく似た母斑細胞が、皮膚や皮下脂肪内で増えることによってできるものです。
ほとんどは生まれつきではなく、生まれてからできていきます。子どものころは皮膚に黒い色が付いているだけですが、段々盛り上がって面積も少し大きくなることが多いようです。
ご質問の方はほくろが皮膚がん、特に悪性黒色腫にならないかと心配されています。以前は「一部の色素性母斑の母斑細胞から悪性黒色腫が発症することがある」という説が支持されていました。
しかし最近では、悪性黒色腫は「皮膚の色素細胞からがん細胞ができ、皮膚の浅いところで広がった後、深部に入っていく」と考えられています。つまり、ほくろが途中でがんに変異するのではなく、悪性黒色腫は最初から悪性黒色腫としてできるということです。そのため、子どものころからあるほくろが皮膚がんになる心配はありません。
ただ、成人してからできた黒いしみは、ほくろか悪性黒色腫の初期段階か、見分けがつきにくいことがあります。形がいびつで非常に黒く、周囲の皮膚に色がにじみ出しているようなら、一度皮膚科か形成外科を受診することをお勧めします。
胸にできたほくろを切除しても、全身的に影響することはありません。ただ、胸の中央部に近い場合、人によっては傷痕がケロイド状になることがあります。
皮膚科医や形成外科医が悪性黒色腫の可能性があると診断して切除した場合でも、良性であることはよくあります。しかし、明らかに良性と診断されたものが悪性黒色腫であることは、まずありません。そのままにしておいても良いと思います。
また、ほくろのある皮膚下に袋状のものができて腫れることが時々あります。チクチク、ズキズキと痛むときがあるということから、その袋ができている可能性が考えられます。痛みが繰り返すようなら、ほくろと一緒に袋を切除する手術をお勧めします。局所麻酔で手術時間は30分もかからないので、日帰りで受けられます。
ただ、ほくろがある場所に偶然、悪性黒色腫ができないとはいえません。急にほくろが大きくなる、色が周囲の皮膚ににじみ出す、よく出血するなどの症状が現れたら、すぐに皮膚科か形成外科を受診してください。