徳島県小児科医会 日浦恭一
食物アレルギーの治療の基本は原因食物の摂取制限です。特に即時型のアレルギーでは厳密な除去を行う必要があります。従って正しい治療を行うためには原因食物を正確に特定しておかなければなりません。
食物アレルギーの原因食物として多いのは乳児期では鶏卵、牛乳、小麦です。幼児期ではこれに加えて魚卵、魚、ピーナッツ、果実、甲殻類で、学童期では甲殻類、小麦、ソバ、果実などが挙げられます。
これらの食物を摂取した後に短時間で何らかの症状が出現した時にはその食物のIgE抗体を測定します。抗体が陽性であれば治療のためにその食物を除去します。
しかしアレルギー症状が即時型でない場合やアトピー性皮膚炎で食物摂取と皮膚炎の関係が明らかでない場合にはその食物の除去には慎重でなければなりません。ふつう抗体検査で陽性の食物をしばらく除去して、症状の改善があるかどうかを観察します。明らかな症状の改善がなければいたずらに長期間の除去は行いません。
アレルギーの原因になる食物は多くが高蛋白で栄養価に富み、子どもの成長にとって大切な栄養素ですから必要以上の制限は有益なものとは限りません。
私たちの腸管には食物を異物として認識しない機能があります。IgE抗体を持っていても食べることができる人は居ます。検査で陽性に出た場合でも完全除去が必要なのは即時型アレルギー、特にアナフィラキシー症状を示すか数値が異常に高い場合です。除去食で症状の改善が見られない時には原因食物の見直しも考慮する必要があります。
徳島新聞2012年3月28日掲載