徳島県小児科医会 日浦恭一
2009年に世界中に大流行した新型インフルエンザの流行は一段落して、季節性インフルエンザとして取り扱われるようになりました。今後このような大流行を引き起こす新型インフルエンザの可能性が危惧されているのが高病原性のトリインフルエンザです。
トリインフルエンザは世界各地で発生しています。このような高病原性の新型インフルエンザの大流行にそなえて普段から準備をしておく必要があります。
普通、トリインフルエンザは簡単に人に感染することはありません。ウイルス表面のHAの感受性が鳥と人では異なるためです。人に感染するインフルエンザのHAはH1~H3の3種類で、トリインフルエンザはH5やH7です。
これまでトリインフルエンザが人に感染したのは鳥と日常的に接触する環境に暮らす人たちです。トリインフルエンザが人から人に伝染するようになると、ほとんどの人に免疫がありませんから大流行になります。病気のトリの殺処分や移動を禁止することで一般の人と病気の鳥との接触を防ぐことが大切です。
もし強毒性の新型インフルエンザが発生した場合、多くの犠牲者が出ます。医療従事者や社会生活を支える立場の人たちも無事では済みません。蔓延を阻止するためには個人や社会生活を犠牲にしてもウィルスを封じ込めることが求められます。
強毒性のインフルエンザの対応には医療機関へのかかり方や予防接種の接種順の決定などのルール作りが大切で、抗ウィルス剤の備蓄も必要です。2009年の新型発生時の経験を生かして対策を立てておきたいものです。
徳島新聞2012年2月22日掲載