徳島県小児科医会 日浦恭一
睡眠はとても大切な生理現象ですが、睡眠を大切にしない人が増えています。最も大きい変化は睡眠時間の減少です。日本人では1960年には平均8時間13分あった睡眠時間が最近の調査では7時間32分まで減少しています。この50年間に約40分も減少しています。欧米の調査ではこのように極端な睡眠時間の減少を見た国はありません。アメリカやイギリスでは最近でも8時間以上の睡眠時間をとっています。
さらに大切なことは睡眠の時間帯の変化です。昔の子どもたちは日が暮れて夕食後比較的早い時間に寝ました。最近の子どもの多くが寝るのは午後10時を過ぎてからです。
このような睡眠時間の減少や睡眠時刻の変化の原因には社会の変化が挙げられます。社会全体が夜型になって、24時間いつでもコンビニは開いていて夜働く人にとってはとても便利です。子どもにとっても受験勉強や塾、部活、携帯、パソコン、ゲームなどで生活はどんどん夜型になっていき、ますます夜更かしになります。必要な睡眠時間を削っても夜更かしをすることになります。夜更かしの翌日は当然、朝寝坊となります。無理に起こしても日中の眠気は強く、集中力に欠けて、単純な課題にもミスをします。心理的にはイライラしてキレやすくなります。学力の低下や事故の増加につながることがあります。
正しい睡眠の習慣のついていない乳幼児にとって必要な睡眠時間が確保できないことや夜更かしの習慣は望ましいことではありません。小さいころからの正しい睡眠習慣をつけることが大切です。
徳島新聞2011年2月16日掲載