徳島県小児科医会 日浦恭一
食物アレルギーとは特定の原因食物を摂取した後に、生体にとって不利な症状が出現することを言います。不利な症状は皮膚や粘膜、呼吸器、消化器などに現れるもので、アナフィラキシーもそのひとつです。
わが国の食物アレルギーの頻度は国民全体では約2%と言われますが、乳児では高く5~10%あるとされます。
食物アレルギーの多くは即時型と呼ばれるもので、食物摂取後すみやかに症状が表れるもので蕁麻疹やアナフィラキシーなどがこれに当ります。食物アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎もありますが、アトピー性皮膚炎の原因すべてが食物ではありません。
免疫は元々生体に侵入した異物を自分の蛋白との違いを識別して排除する機構です。アレルギーも免疫反応のひとつで、食物として摂取した蛋白が自身の蛋白と異なると識別されれば免疫反応が起こります。摂取された蛋白がアミノ酸やペプチドにまで十分に消化分解された後に吸収されるのであれば有害な免疫反応は起きないはずです。
しかし私たちが摂取する多くの蛋白はそれ程十分には消化されずに吸収されます。多くの人では自分の蛋白と多少異なる食物の蛋白が吸収されても、必ずしも不利なアレルギー反応が起こるとは限りません。
アレルギーはすべての食物の蛋白が原因になるわけではありません。アレルギーを起こしやすい蛋白と、アレルギーを起こしやすい人の組み合わせで発病するものです。
徳島新聞2010年10月13日掲載