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 日本脳炎はウイルスを持った蚊に刺されても全員が発病するわけではありません。日本脳炎の発病率は100人から1,000人に1人くらいです。日本脳炎ウイルスに感染しても無症状や軽い夏かぜ症状のみで終わることが多く、発病しても無菌性髄膜炎で終わる場合もあります。

 日本脳炎の潜伏期間は1~2週間です。日本脳炎ウイルスを持った蚊に刺されて1~2週間すると発病するのです。

 最初の症状は急激な発熱と激しい頭痛ですが、小児では腹痛や下痢が初発症状になることもあります。発病後2~4日間は頭痛、高熱、悪寒、食欲低下、吐き気、嘔吐(おうと)、うとうとした状態が続きます。

 さらに進行すると首の後ろが硬くなるなどの髄膜刺激症状と呼ばれる症状が出てきます。また意識障害や異常な反射が見られ、手足のまひやけいれんが出現します。意識障害が進行してこん睡状態に陥ると1週間程度で死亡することがあります。

 脳炎を発病した場合の死亡率はこれまで20~40%程度ときわめて高く、重症の急性脳炎症状を呈します。たとえ死を免れた場合でも45~70%は知能障害や運動障害などの後遺症を残します。とくに小児では重度の障害を残すことが多いと言われます。

 最近は脳炎に対する治療法が進歩したために死亡率は10~15%程度に減少していますが、反対に後遺症を残す割合は増加していると言われます。

 日本脳炎ウイルスにかかって急性脳炎を発病すると脳神経細胞に重篤な障害が残ります。最近日本では子どもの急性脳炎を見ても、日本脳炎を考えることは一般的ではありません。しかし治療を開始する時点で必ず日本脳炎を考えておく必要があります。

 日本脳炎患者が急速に減少してから、ほとんどの患者は成人でした。しかし昨年9月には熊本で3歳の子どもの日本脳炎が報告されています。

 日本脳炎に特異的に効く薬剤はありません。予防接種以外に子どもたちを日本脳炎から守る手段はないのです。1日も早く安全なワクチンの再開が望まれます。

2007年5月15日掲載

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