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 インフルエンザは高熱が特徴のウイルス疾患ですから子どもにとっては大変重い症状です。ただし子どもがインフルエンザだけで死ぬことはめったにありません。しかしインフルエンザ脳症だけは別です。かかると死亡率が高く、たとえ治っても重い後遺症が残ることがあります。

 インフルエンザ脳症はインフルエンザの合併症の中でもっとも重いものです。以前はインフルエンザ脳症にかかると30%は死亡し、25%は重い後遺症を残すとされました。その後治療法の改善などで死亡率は15%くらいまで低下しましたが重症の合併症であることに変わりはありません。

 脳炎と脳症はよく似た病気です。症状だけから区別することはできません。脳炎は脳に直接ウイルスが侵入、増殖して脳に炎症を起こす疾患です。神経細胞がウイルスによって破壊されます。この時、脳内にはリンパ球やマクロファージと呼ばれる炎症細胞が多く見られ、脳は腫れやすくなります。

 これに対して脳症は脳の中にはウイルスも炎症細胞の増加も見られません。それでも脳が腫れやすくなって頭蓋(ずがい)内の圧力が高くなっています。その結果、脳全体の機能が低下して意識障害を起こします。

 インフルエンザ脳症の代表的な症状はけいれん、意識障害、異常行動です。インフルエンザは高熱を特徴としますから、脳症でない場合にもよく熱性けいれんを起こすことがあります。発病初期のけいれんが熱性けいれんなのか、脳症にともなうけいれんなのかは専門家でもすぐに区別することはできません。

 ただし、けいれんが止まっているのに意識がはっきりしない、15~20分以上けいれんが続いた、けいれんの前後に異常な言動が見られた時などには脳症を疑って十分に経過観察する必要があります。

 インフルエンザ脳症の中にはいろいろな疾患が含まれている可能性があります。その中の原因のひとつに解熱剤の使用がきっかけとなった脳症があります。発熱もウイルスと戦う免疫反応による大切な症状ですから、安易な解熱剤の使用は控えなければいけません。

2007年2月20日掲載

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