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 子どもの嘔吐の原因は年齢によって大きく異なることが知られています。正常の新生児でもミルクをよく吐きますが、まれに全身疾患や外科的疾患など重篤な原因が隠れていることがあり注意を必要とします。

 新生児の嘔吐の大部分はほとんどが生理的なものです。新生児では食道胃移行部の括約筋の機能が未熟で、また胃の蠕動(ぜんどう)運動が乏しいこと、体位によって胃内容の通過時間が異なることなどから嘔吐が起こりやすいと考えられます。分娩に伴って嚥下した羊水や血液が刺激になって嘔吐することもあります。嘔吐の内容は羊水や粘液が多く、ときに嚥下した血液が見られることもあります。このような新生児の嘔吐を初期嘔吐と呼びます。この嘔吐は持続も短く治療が必要となることはほとんどありません。

 しかし新生児嘔吐の中にはまれに消化管の閉塞である食道閉鎖や十二指腸閉鎖、腸回転異常など消化管の器質的な異常が隠れていることがあります。消化管の閉塞は早期に診断をつけて外科的処理をする必要があります。他にも頭蓋内出血や脳浮腫、核黄疸など中枢神経疾患や敗血症、髄膜炎、尿路感染症などの重症感染症、ガラクトース血症や副腎性器症候群など先天代謝異常、ミルクアレルギーによる嘔吐なども早期の処置が必要な疾患です。

 新生児の嘔吐が重篤な疾患によるものかどうかは、嘔吐の頻度、吐物の内容や量、吐き方など状態の他に腹部膨満や呼吸障害、発熱やけいれんなどの合併症の有無、遷延分娩や仮死の有無など分娩時の状況の確認が必要とされます。これらの異常がある場合には血液・生化学検査やレントゲン・エコー検査など精密検査を進めることになります。

 治療を急ぐ重篤な外科疾患や先天代謝異常などが否定されれば、新生児嘔吐に対する処置は、胃洗浄で羊水や血液など嘔吐の原因となる物質を除去し、母乳栄養を積極的に進めることで胎便の排出を図ることになります。輸液などの処置を必要とすることはほとんどありませんから分娩直後の母親の不安を取り除いて母乳栄養を確立することが大切です。

2004年4月22日掲載

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