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 健康だと思われていた乳児が睡眠中に突然、呼吸を停止して死んでしまう病気、乳幼児突然死症候群SIDSが最近問題になっています。この疾患の原因は死亡前の病状や死後の解剖によっても明らかにすることは出来ません。我が国では乳幼児の死亡原因の第3位にあげられ、全体に乳児死亡が減少している中にあってその発生頻度は、乳児2,000人に1人、1年間に約600人の乳児がSIDSで亡くなっていると考えられています。

 SIDSが問題になるのは原因不明の突然死で、死亡直前の病状や死後の解剖によってもその死亡原因が明らかにされないことです。剖検してみると、生前に気がつかれていなかった心疾患や神経疾患、髄膜炎や肺炎などの感染症、誤嚥による窒息や転落事故による頭蓋内出血、薬物中毒などの他、虐待や犯罪などによる死亡原因が明らかになることがあります。このような死亡原因が見つからない場合にSIDSとされます。剖検をすることで事故や犯罪による死亡を鑑別することはきわめて大切なことです。我が国の乳児の突然死に対する剖検率は20%以下と低いものです。はっきりした原因が明らかにされたものはSIDSから除外しなければなりません。昔は母親の不注意による事故や窒息死と診断された症例の中にこの疾患が隠れていたものと思われます。また臨床的に原因不明の突然死を遂げた乳児を剖検することなくSIDSと診断することがありますが、虐待や事故による症例が含まれている可能性は否定できません。

 SIDSは生後4ヵ月に発生のピークがあり、生後6ヵ月までにその80%が発生します。SIDSは健康な乳児に発生するもので予防が難しい疾患とされています。しかし最近は育児環境を整備することでその発生を低くすることが出来ることも明らかにされています。SIDSは珍しいものではなく、身近な疾患として十分に注意したいものです。

2003年1月14日掲載

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