【質問】就寝中など頻繁に足がつる
80代の女性です。就寝中に足がよくつります。一晩で1、2回つり、治るまでに1~2分かかるので寝付きも悪く、体調不良が続いています。食道裂孔ヘルニアの薬を飲んでいますが、他の薬は飲んでいません。風呂に入った後でも1度はつります。日常生活で気を付けることや食事療法があれば教えてください。
【答え】芍薬甘草湯が極めて有用
森本整形外科 森本博之
「足がつる」というのは、不意に襲ってくる筋肉の痙攣(けいれん)状態で、腓腹筋(ひふくきん)(こむら)に頻発することから「こむら返り」とも呼ばれています。腓腹筋は数秒から数分間、激痛を伴って強く痙攣し続けます。足(そく)趾(し)、手指、首などにも似た現象が起こることがあります。
激しい運動時や、筋肉が疲労した日の夜間に足がつるのは各年齢層に見られることであり、高齢者では特別な原因もなく足がつることもあります。しかし、頻繁に足のつりを繰り返す場合は原因を調べます。
例えば、血液中の水分不足(脱水症、下痢)、筋肉にかかわるカルシウム・マグネシウム・ナトリウムなどの電解質異常(ミネラル不足、副甲状腺機能低下症)、肝硬変、糖尿病、腎不全などの内臓疾患、下肢の血行障害(閉塞性動脈硬化症、静脈血栓症)、筋肉・神経の疾患(筋萎縮(いしゅく)症、腰部脊柱(せきちゅう)管狭窄症)などが挙げられます。
芍薬(しゃくやく)甘草湯(かんぞうとう)エキス顆粒(かりゅう)はこむら返りに極めて有効な薬剤です。通常、漢方薬は個人の体質(陰陽、虚実の証)で処方を決定しますが、芍薬甘草湯は証を考慮しないで、筋肉の痙攣を伴う疼痛(とうつう)、急激な腹痛などの自覚症状だけを目標に使用できます。
さらに、他の漢方薬より即効性があり、服用量も通常(3包)の3分の1(1包)程度で十分に効き目があります。芍薬甘草湯1包を就寝前に服用するか、足がつった直後に頓用(とんよう)として服用します。
ご質問の日常生活面では、足の冷え、筋肉疲労、脱水状態などを改善します。極端な運動不足も足のつりの原因になります。まずは足が冷えないように軽く腓腹筋をマッサージし、ストレッチを追加して筋肉をほぐし血行を良くします。
風呂上がりのレッグウオーマーの着用はさらに腓腹筋の保温に効果的です。散歩などの手軽な運動を定期的に続けることは、足の血行を良くして筋肉の疲労を回復し、さらに運動不足も解消されて足のつりの予防効果が期待できます。
食事面では、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルやビタミンが不足しないようにします。ビタミンDは魚肉やキノコ類の食品に多く含まれていて、体内で活性型ビタミンDとなり、カルシウムの動きを調節します。
カルシウムの経口摂取が不足し、血中のカルシウム値が低下すると、筋肉・神経は機能不全になり危険な状態に陥ります。これを回避するために骨のカルシウムが溶出して血中カルシウム値を正常に保ちます。しかし、この状態が長期間続くと、骨自体がカルシウム不足になり骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を来し、骨折しやすくなります。
水は体の新陳代謝を促し老廃物を流し出すために必要不可欠なため、こまめに水分を補給することが大切です。
足のつりが頻繁に起こり長期間続くようなら、かかりつけ医にご相談してみることをお薦めします。