【質問】手術するべきか悩む
60代の女性です。4、5年前、泌尿器科で尿道脱と診断されました。医師は、手術をしてもまた尿道が出てくるかもしれないので、手術はしなくていいと言いました。しかし、別の病院では手術をした方がいいと言います。手術をしないで放置していると、どんどん出てくるのでしょうか。また手術をした場合、再度尿道脱にはならないのでしょうか。尿道が短くなる心配や費用がどれくらいかかるかも含め、良い点と悪い点を教えてください。
【答え】症状なければ様子見を
徳島大学病院泌尿器科 山本恭代
尿道脱とは、尿道の出口の粘膜が尿道の外にめくれて飛び出してくる、小さな女の子や高齢の女性に見られる良性の病気です。下着や、排尿後に拭いたトイレットペーパーに血液が付いたことにより、気付くことが多いようです。
また尿道脱が大きくなると尿が出にくくなったり、脱出した粘膜が締め付けられると痛みが起きたりすることもあります。
よく似ているものに「尿道カルンクル」があり、こちらは高齢女性の尿道出口の6時方向にできる紅色の良性腫(しゅ)瘍(よう)で、やはり出血などで気付き受診されます。
尿道脱は、生まれつき尿道や骨盤内の組織が弱いことも原因の一つです。高齢女性の場合は、出産時の外陰部の損傷や閉経後の女性ホルモン不足なども原因となっています。
尿道は一番内側が粘膜で、その外側が内縦走筋、外輪状筋となっており、これら二つの筋肉の間が緩くなって尿道脱が生じると考えられています。咳(せき)や便秘などで腹圧をかけることが多い方は尿道脱を起こしたり、症状を悪化させたりします。
治療はまず、女性ホルモン剤の軟(なん)膏(こう)やステロイド軟膏の外用が行われます。日本では、女性ホルモン剤の軟膏を病院で処方することが難しく、まずはステロイド軟膏を使うことが多いようです。これらの軟膏は症状を改善させますが、67%で再発するといわれています。
ご質問の方は、4、5年前から診断されているとのことですが、尿道脱が原因でお困りになっていることはありますか? 放置しても大きくなったり症状が現れたりすることがないのであれば、様子を見ていただいてもよいと思います。
腹圧をかけると症状を悪くさせますので、便秘がちな方は便秘を改善させてください。腹圧をかけるような動作も長く続けないように気を付けてください。
軟膏による治療で再発したり、出血や痛み、排尿困難などの症状が出て悩まれたりするようでしたら、手術療法を勧めます。手術は麻酔をかけて、飛び出してめくれかえっている尿道粘膜を切除し、外側の皮膚と内側の尿道粘膜を縫い合わせます。
患者さんの状態によって全身麻酔もしくは脊椎麻酔で行い、手術は30分程度です。合併症は少なく、術中の出血や感染症などが生じる可能性もありますが、程度は軽いものです。手術後まれに、尿があちこちに飛び散るようになることがあります。
手術前日に入院していただき、手術後2、3日は排尿のための管を膀胱(ぼうこう)内に入れておきますので、当院では5、6日の入院が必要です。手術は保険適応となっており、費用は3割負担の方で2万3千円程度。そのほかに薬剤や入院費などがかかります。
手術を行って再発することは少なく、飛び出している粘膜を切除するのみですので、尿道が短くなるようなことはありません。ご質問の方については、4、5年前と現在では病状が異なっている可能性もありますので、主治医と治療法についてご相談してください。