ゴロゴロ動く腸 改善法は
【質問】70代の女性です。昨年11月ごろから右脇腹の腸の辺りがゴロゴロと動くように感じます。今年2月、胃腸科でコンピューター断層撮影(CT)検査を受けると胆石が見つかったため腹腔鏡手術を受けましたが、症状は変わりません。あおむけに寝ると毎回、1分ほど動く感じがします。婦人科や内科にも行きましたが、異常はないと言われました。どうすれば改善するのか教えてください。
勝浦病院内科 近藤憲保 先生
ストレスなら催眠療法も
【答え】胆石の手術を受けた後も同じ症状が続いていることから、胆石症とは無関係のようです。婦人科と内科でも異常がみられないことから、大腸がんや炎症性腸疾患、感染性腸炎、乳糖不耐症なども除外できそうです。そうすると、臓器そのものは正常なのに、働きに異常が生じる「機能性消化管障害」の可能性が最も高いと考えられます。
世界的な機能性消化管障害の診断基準では、胃に関する障害(機能性胃・十二指腸障害)と、腸に関する障害(機能性腸障害)に大別されます。今回の質問では、右脇腹の腸の辺りに症状がみられることから、機能性腸障害でしょう。
機能性消化管障害には、さまざまな薬があります。消化管運動機能改善薬、弱い抗不安薬、少量の抗うつ剤などを使うことがあります。よく使われる漢方薬も数種類あります。内科では異常がなかったとのことで、診察した医師は軽症のため薬は必要ないと判断したと思われます。
コーヒー、アルコール、香辛料は症状悪化の原因となるので、日常的に摂取している場合は量を減らしてください。適度な睡眠と運動が大切なのは言うまでもありません。腸環境の改善には、善玉菌を増やすことも良いとされます。
心の働きも胃腸に影響します。日本消化器病学会が定めた2014年の診療ガイドラインでは、認知行動療法や催眠療法も有効な治療法としています。
認知行動療法は、患者がカウンセリングを受けながら自らの考え方や行動を分析し、問題点を修正しながらストレスに対処できるようにします。ただ、導入している精神科医や臨床心理士は少なく、実費と時間もかかります。
簡単な方法としては、自分に暗示をかけて身体の緊張を鎮める「自律訓練法」や江戸時代から伝わる「白隠の内観法」などがあります。
1932年にドイツの精神科医シュルツが発表した自律訓練法は、一種のリラックス法です。両手両足の重感と温感、額部の涼感などを頭の中で繰り返しイメージし、段階的に穏やかな気持ちになりやすくします。
白隠の内観法は、駿河国(静岡県)の名僧として知られた白隠禅師が考案しました。ユニークな書画も残した白隠禅師は、禅を分かりやすく説いた書物を残しています。その一つ「夜舟閑話」で内観法を紹介しています。解説書も出版されているので、やる気があれば一人でも習得できます。
こうした改善のための努力を続けていると、ストレスに負けない考え方や心構えは、自分で工夫できることが次第に分かります。自分自身で治そうという気持ちも、治療の上で大切なことです。