口の中が乾燥する
【質問】70代の女性です。4月ごろから舌が白いのに気付きました。受診した口腔(こうくう)科では、高齢になると「苔(こけ)」ができやすいので、舌ブラシを使って掃除するように言われました。また、夜に寝ているときは口の中が乾燥して舌がカラカラになります。つばを飲み込む際に、両耳の奥でガサッとした音がするのも気になります。2年前に心筋梗塞になり、心臓の薬を飲んでいるので副作用の影響なのか心配です。
宇高耳鼻咽喉科医院 宇高二良 先生
唾液が減少、水分摂取を
【答え】舌には乳頭と言われるものが存在します。舌の表面を触ったときにザラザラしている部分です。その中でも糸状乳頭は舌の全体に分布し、食物の保持や咀嚼(そしゃく)、飲み込むのに役立っています。はがれた口の粘膜や細菌、食物の残りかすなどが糸状乳頭に付着すると、白い苔のように見えます。これを舌苔(ぜつたい)と呼びます。
舌苔は口腔内の衛生状態や体調によって増減します。高齢になり、柔らかいものばかり食べていると、舌苔は増えます。痛みはなく、食事や会話など舌の働きに支障はありませんが、口臭の原因になることがあります。舌苔が気になるようなら、歯ブラシなど硬い素材ではなく、専用の舌ブラシやスポンジを使って掃除してください。ただ、掃除をやり過ぎるとかえって舌を傷つけ、本来の働きを阻害する恐れがあるので注意が必要です。
口腔は唾液腺から分泌される唾液により常に湿った状態が保たれています。ただ、分泌量の減少や唾液の過剰消費により、口腔が乾燥する場合があります。
分泌量が減少する原因は、シェーグレン症候群のような唾液腺の疾患、脱水や糖尿病などによる水分バランスの変化、薬物、心理的負荷などが考えられます。また、高齢化に伴う唾液腺の機能低下も関係します。
過剰消費の原因の一つは口呼吸です。睡眠時に舌が乾燥するのはよくあることで、年齢とともに舌や喉の筋肉の緊張が緩み、口を開けたまま寝ている可能性があります。
口の中が乾燥する原因となる薬は循環系の薬剤、抗アレルギー剤、抗不安剤などさまざまな種類があります。これらの薬は唾液や鼻汁など体の余った水分を血管内に戻す作用があり、口の中が乾燥するということは、これらの薬剤がよく効いている証拠でもあります。薬の中止や変更に当たっては担当の医師とよく相談してください。
今回の相談で、口が乾燥する要因としては、夜間の口呼吸や年齢による唾液の分泌減少、薬物の服用などが考えられます。家庭でできる最も簡単な対処法は、うがいや小まめな水分摂取が挙げられます。夜間の口の中の乾燥には▽横向きに寝る▽マスクをする▽部屋を加湿する-などが有効です。口腔保湿ゲル剤や人工唾液の使用もお勧めします。
耳が「ガサっとする」ことについては、他の症状とは別に、耳あかが鼓膜に付着している場合や、耳の中の圧を調節する耳管の不調などが原因かもしれません。まずは耳鼻咽喉科を受診されてはいかがでしょうか。