【質問】首牽引も回復せず
力仕事をしている40代の男性です。2011年3月ごろから、右腕がしびれるようになりました。整形外科を受診し、総合病院で血液、筋電図、MRI(磁気共鳴画像装置)などの検査を行いました。結果は、首のヘルニアが神経に少し触れている程度で、手術するほどの重症ではないとのことでした。当初は整形外科に通院し、首の牽引(けんいん)などをしていましたが治りませんでした。整体、はり治療、マッサージも試しましたが、以前のようには回復しません。良くなる方法を教えてください。
【答え】無理な矯正避け診察継続を
城東整形外科内科 岡田祐司
椎間板ヘルニアといえば、腰(腰椎)のヘルニアが一般的ですが、首(頚椎(けいつい))でもヘルニアが出ることがあります。腰椎では20~40代に発生しやすいのに比べ、頚椎では30~50代に好発するといわれています。椎間板は一つ一つの背骨(椎体)の間にあり、クッションの役目を果たしていますが、何らかの原因で裂けて後ろに飛び出ると、ヘルニアとして脊髄(せきずい)や神経を圧迫することになります。
ヘルニアは、その大きさや出る方向などにより症状はさまざまです。初期では首から肩、腕にかけて痛みやしびれが走り、首をそらすことによって症状が強くなります。しびれが慢性化すると握力が低下し、手指を細かく動かしにくくなります。
さらに進行すると、足がヒョクヒョクして転びやすくなり、尿が出にくくなる(排尿障害)こともあります。頚椎椎間板ヘルニアの一般的な治療は、急性期には頚椎カラー装具を着けて頚部を固定し、消炎鎮痛剤の内服や、痛みが強い場合には神経ブロックなどで緩和します。
症状に応じて薬物(しびれの場合は一般にビタミンB12やE)を追加処方し、慢性期では電気治療、温熱、牽引などの物理療法やストレッチ体操などを併用します。また、日常生活では首の後屈(後ろにそらすこと)を避け、就眠時の枕の高さに気を付ける(個々の頚椎のカーブに沿うように首の下にタオルなどを敷く)ことも重要です。
ヘルニアで脊髄・神経が圧迫されている場合は、無理な矯正はやめてください。矯正後の麻(ま)痺(ひ)が心配です。これらの方法で症状の改善がなく、手足の筋力低下が増悪する場合や、歩行障害・排尿障害などを伴う場合は、手術的治療を考慮せざるを得なくなってきます。
手術は、前からする方法(前方法)と後ろからする方法(後方法)があり、通常ヘルニアが1カ所(または2カ所まで)であれば、前方から骨を削って直接ヘルニアを取る方法(前方除圧固定術)を選択します。
脊柱管(脊髄・神経が通っている管)が狭い場合には、後方から脊柱管を広げる方法(椎弓形成術)を採るのが一般的です。最近ではできるだけ創の痛みを小さくし、より安全に手術をするために顕微鏡を使っています。
ご質問のように、しびれに対しての薬物療法や物理療法が無効でも、定期的な診察の継続をお勧めします。自己判断でしびれを放置すると筋肉が痩せてくる(筋萎縮)ことがあり、手術をしても回復が困難な場合があるからです。
また、原因疾患に関しては、総合病院の整形外科で精査された上で頚椎椎間板ヘルニアと診断されているので、その他の疾患(例えば胸郭出口症候群や末梢神経障害など)は当然否定されていると思われますが、念のため、脳梗塞などの脳外科的疾患や多発性硬化症などの神経内科的な疾患についても診察を受けられた方が安心と思います。主治医とご相談してみてください。