徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 痰がわき出し止まらない

 20代の女性です。痰(たん)を吐いても、すぐにじわじわとわき出てきて吐きたくなります。痛みなどはありませんが、1日に何百回も吐くほど。この症状が出るようになってから、もう4年になります。痰が延々と出てくる症状をインターネットで調べると「ブロンコレア」という病名のようです。昨年11月に総合病院で検査を受けましたが、異常はありませんでした。循環器消化器内科で処方された薬を飲んでいますが、まったく改善されません。たばこも吸いませんし、お酒も飲みませんが、喘息(ぜんそく)はあります。何科の病院に行けばいいのでしょうか。



【答え】 ブロンコレア -ステロイド薬で苦痛軽減-

かわの内科アレルギー科 河野徹也(鳴門市撫養町立岩)

 ブロンコレアは、1日に100ミリリットル以上もの大量の痰が出る病態です。原因不明の場合(喘息などのアレルギー素因のある方に多い)と、肺胞上皮がん、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺結核などの病気が原因の場合があります。原因となる病気がある場合は、その病気の症状も示し、病気に対する治療で痰の減少が期待できます。

 原因不明のブロンコレアの症状は、多量の痰、痰の排出困難感、へばりつき感が主で、そのために強いせき込みや、夜に熟睡できない場合もあります。1日の痰を容器にためると、下3分の2は卵白のようであり、上3分の1は白い泡のような特徴的な外観を認めます。

 発症のメカニズムは十分には分かっていませんが、気管、気管支での痰の分泌量の増加や、分泌物の輸送能力の亢進(こうしん)などが考えられています。

 レントゲンやCTなどの画像検査、痰の検査(細胞診・細菌や結核菌などの培養検査)、血液検査、呼吸機能検査などで原因となる病気の有無について調べます。また、鼻炎や副鼻腔炎によって鼻汁が喉の奥や口の中にたまる状態や、唾液の過剰分泌を痰と認識していることもあるので、耳鼻科領域に異常がないかも調べます。繰り返しになりますが、検査で原因となる病気が見つかれば、その病気の治療が最も有効です。

 原因となる病気がなく、痰の排出困難感やへばりつき感、強いせき込みなどの自覚症状、1日に合計100ミリリットル以上の特徴的な痰を認めれば(原因不明の)ブロンコレアの診断は確定します。

 治療は、ステロイド薬の全身投与が有効です。しかし、この治療は長期にわたる場合が多く、糖尿病や胃潰瘍、感染症などの副作用に注意が必要です。そのため、実際に治療を行う際には、治療内容、予想される副作用などについて患者の理解が必要です。

 ステロイド剤により完全に痰を抑制できた例では再発はまれとされる一方で、全体の約2割の方は痰を完全には抑制できないとされています。その場合は、痰を最小にするために他の治療薬への変更や併用が検討され、一部の症例ではマクロライド系抗生剤、抗ヒスタミン薬、気管支拡張剤、インドメサシン吸入などの有効性が報告されています。

 質問された方のように喘息にブロンコレアを合併した例では、喘息が重症化している場合が多く、吸入ステロイド薬を中心とした喘息治療を強力に行うと喘息のコントロールが良くなり、痰を出しやすくなることで苦痛が軽減する場合もあります。

 喘息、ブロンコレアともに呼吸器領域の病気ですので、呼吸器内科を受診されると良いと思います。

徳島新聞2012年6月17日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.