【質問】 呼吸苦しく指しびれる
20代の女性です。3カ月ほど前から呼吸が苦しく、指などがしびれた感覚になるときがあります。病院で過換気症候群だと言われました。いつ発作が起きるか不安です。完治する方法はありますか。ストレスが原因だとよく言われますが、仕事をしていて自分でストレスを感じることはあまりありません。
【答え】 過換気症候群 -行動療法と薬物の併用を-
岩城クリニック 院長 兼田康宏(阿南市学原町上水田)
過換気症候群とは、精神的な不安によって過呼吸(呼吸困難や頻呼吸)となり、その結果として、恐怖感や胸痛、手足や唇のしびれといった感覚異常、失神などの症状が引き起こされるものです。
これらは身体表現性障害で、従来、心身症と呼ばれていた疾患群の一種です。過換気症候群は若年女性に多くみられますが、男女を問わず、あらゆる年齢に起こりえます。
過呼吸の発作が起きても命に別条はありませんので、まずは「大丈夫」と自分に言い聞かせることです。そのうち落ち着きを取り戻していきます。発作時の最も一般的な対処法はペーパーバッグ法で、紙袋で口と鼻を覆い、その中で呼吸をします。特に不安が強い場合には、抗不安薬を頓服(とんぷく)として使用することもあります。
身体表現性障害は、基本的には、その発症に心理的な要因(心的ストレス)と性格が関係し、ストレスが強い場合あるいは性格的にデリケートな場合、その結果として、さまざまな身体症状を呈しやすくなります。従って、身体表現性障害の一種である過換気症候群の治療には二つのアプローチ、すなわちストレスの軽減と性格の補強が考えられます。
まずストレスですが、私たちは気付かないうちにさまざまなストレスにさらされています。そこで、職場や家庭においてどんなストレスをどの程度受けているのか、ストレス評価表<表参照>を参考に、ご自分で評価されてみてはいかがでしょうか。また、自己暗示力などを利用して、不安とともに身体の緊張を鎮める「自律訓練法」が有効な場合があります。
次に、性格的な面に関してですが、性格自体を変えることは困難だとしても、考え方を変えてみること(修正)は可能です。そのためには、ある事象に対するイメージを修正して次第に苦手な状況に慣れさせていく「認知行動療法」が効果があるかもしれません。
薬物療法も有効です。薬物療法で症状の軽減を図りつつ、心理療法や行動療法(自律訓練法や認知行動療法)により、心理的要因をうまく処理できるように考え方を変えていくのです。
ただし、過換気症候群にはさまざまな疾患が潜んでいます。精神科・心療内科の領域では、パニック障害がその代表的なものです。幸い、このパニック障害には比較的、薬物療法が効果的です。また、身体的な疾患も見逃すわけにはいきませんので、かかりつけ医のもとで十分に身体的な診察を受けてください。
身体的な異常がなく、精神的な原因による機能障害の可能性が高い場合には、精神科や心療内科で治療を受けられることをお勧めします。
徳島新聞2012年1月15日号より転載