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【質問】 右顔面がピリピリ痛む

 70代の男性です。10年くらい前から、右頬から口元にかけてピリピリと痛むようになり、三叉(さんさ)神経痛と診断されました。薬物療法を続けていますが、最近、食事の時に痛みが激しく、痛み止めを服用しています。根本的に治す方法はないのでしょうか。また、現在は脳外科に通院していますが、何科がいいのでしょうか。



【答え】 三叉神経痛 -専門医による手術で根治を-

賀川脳外科クリニック 院長 賀川 潤(徳島市応神町東貞方)

 顔面の痛みはいろいろな原因で起こりますが、代表的なものが三叉神経痛です。

 三叉神経は、12対ある脳神経の一つで、三叉とは、この神経が三つの大きな神経、いわゆる眼神経、上顎(じょうがく)神経、下顎神経に分かれることに由来したものです。それぞれの神経は顔面の知覚を支配していますが、何らかの刺激が加わることにより、その分布領域に痛みが生じます。

 三叉神経痛は、最初はその神経領域にピリピリと針で刺すような痛みを感じることが多いのですが、次第に強くなってくると、突発的な激痛が数秒から数十秒続くようになります。この痛みは▽洗顔▽ひげそり▽歯磨き▽冷水を飲む▽食べ物をかむ-などによって誘発され、耐え難い激痛となることがあります。

 この激痛は、頭蓋(ずがい)内での動脈硬化により、硬化、延長、蛇行した動脈が三叉神経に接し、圧迫することで起こると考えられています。また、まれではありますが、脳腫瘍(しゅよう)や脳動静脈奇形などが圧迫の原因となることもあります。

 診断は、MRI撮影が最も有用で、脳腫瘍などはもちろん、三叉神経とそれを圧迫する動脈を直接確認することもできます。

 三叉神経痛の治療としては、内服療法、神経ブロック、手術療法があります。内服治療や神経ブロックは、初めは効果的であっても、その鎮痛効果が一時的なものとなり、痛みが次第に強くなって、我慢の限度を超えるようになることがあります。

 ご質問の方も、約10年が経過して次第に耐え難い激痛となっているようで、薬物療法では今の状態を改善することは難しいと思われます。根本的な治療をお考えのようですので、手術療法についてご説明いたします。

 手術は神経血管減圧術といいます。方法は、まず、痛みがある側の耳の後ろの頭蓋骨に500円硬貨ほどの穴を開け、手術用顕微鏡を使って、動脈が三叉神経を圧迫している場所を探します。場所を確認した後、圧迫している動脈を三叉神経からはがし、その動脈が再び圧迫しないように移動させて固定します。

 手術は2~3時間で、手術成績としては、90%以上の患者で痛みが消失したという報告がされているようで、三叉神経痛の根本的な治療法として期待できます。

 しかし、手術療法は一定の危険を伴います。三叉神経の近くには、呼吸や血液循環の中枢である脳幹部、顔面神経、聴神経、また、眼球を動かす神経などがあり、合併症として、これらの神経障害が出現することがあります。

 手術の際には、これらの合併症予防のため、生理学的モニタリングなどいろいろな工夫をしますが、それでも1~数%の確率で合併症を伴います。この手術方法は、近年、教科書に載るほど一般的なものとなっていますが、やはり、この手術を得意とし、熟練した脳外科医に依頼することが大切だと思います。

 いま一度、脳神経外科で詳しい説明を受けられ、今後の治療方針を決められるのがよいと思います。

徳島新聞2011年5月22日号より転載

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