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【質問】 薬飲んでも朝血圧高い

 60代の男性です。3年前から血圧を下げる薬を服用しています。朝に測定すると、上が140~150、下が80~90ありますが、昼や夜は、上が110~120、下が60~70まで低くなります。朝だけ高い人は、利尿剤を飲むとよいと聞きましたが、副作用はないのか、血圧が下がってからも飲み続ける方がいいのかを教えてください。また、飲んではいけないケースがあるのかも知りたいです。



【答え】 早朝高血圧 -降圧薬切り替えや利尿剤も-

碩心館病院院長 藤本 卓(小松島市江田町)

 血圧は通常、夜寝ている間は低く、朝方から午前中にかけてゆっくりと上昇し、昼間は高くなっています。ところが、高血圧の患者の中には、質問者と同様に、薬を飲んで昼間の血圧が下がっていても、起床時の血圧が高いままの方がいます。このような高血圧は「早朝高血圧」と呼ばれ、脳卒中や心筋梗塞などの脳・心血管疾患の危険性が高いことが注目されています。

 起床前後に血圧が高くなっていくのは、血圧の調整を行う交感神経が、目覚めとともに活発になるからです。また、交感神経の活性が高まると、血管の収縮によって血液が流れにくくなったり、血液が固まりやすくなったりします。脳卒中や心筋梗塞は、朝から午前中にかけて起こることが多く、この時間帯は早朝高血圧になっている時間帯と重なります。

 早朝高血圧のタイプには、夜間高血圧から血圧が下がらないまま早朝高血圧に移行するノンディッパー型と、夜間は血圧が低く朝方に上昇するディッパー型があり、ノンディッパー型の方が危険性が高いといわれています。

 早朝高血圧は、病院やクリニックで測る血圧(外来血圧)では診断できませんので、朝や寝る前に、患者自身が測った血圧(家庭血圧)の記録が必要となります。最近は、1日の血圧変動を記録する24時間血圧計も普及し、ノンディッパー型、ディッパー型の区別ができるようになってきています。

 早朝高血圧の治療は、これまで服用してきた薬の種類などによって、治療の方針が決まってきます。降圧薬の作用が短いために朝まで十分に効いていない患者は、長時間効く降圧薬に切り替えます。また、朝の薬を夕食後に服用したり、朝夕に分割したりして服用することもあります。

 このような目的に使用される降圧薬としては、持続型カルシウム拮抗(きっこう)剤(CCB)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が一般的です。CCBは、血管を拡張させて24時間以上にわたって血圧を下げます。安全性が高く、確実に血圧を下げるとされています。ARBは、血圧を上昇させるホルモンの作用を抑え、早朝高血圧に効果的とされる薬剤です。

 ご質問にある利尿剤も、体内の塩分や水分の排泄(はいせつ)を促して血圧を下げ、特に早朝高血圧に有効です。少量をARBと併用することで副作用を抑え、高い降圧効果が期待されます。しかし、利尿剤は高熱、下痢、嘔吐(おうと)のときは脱水に注意が必要ですし、痛風、高尿酸血症、糖尿病に悪い影響を与えることがあり、注意が必要です。

 最近は、それぞれの薬剤を一つにまとめた合剤も発売され、服薬が簡便になっています。

 家庭血圧の管理は、上(収縮期血圧)が135mmHg未満、下(拡張期血圧)が85mmHg未満を目標にします。しかし、糖尿病や心臓病、腎臓病など合併症によって、この降圧目標は変わってきます。血圧の経過によって薬剤を増やしたり変更したり、また減量する場合も出てくると思われます。家庭血圧や血液検査などの指標を参考に、かかりつけ医と十分に相談しながら治療を続けてください。

徳島新聞2011年5月8日号より転載

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