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【質問】 何度眠っても目覚める

 20代の女性です。最近、寝つきが悪くて困っています。布団に入っても意識がはっきりしてなかなか眠れず、眠っても何度も目が覚めます。戸締まりなどのささいなことが気になり、確認していると完全に起きてしまいます。睡眠薬を飲んだこともありますが、翌日、仕事に遅刻したり仕事に集中できなかったりしたので、服用をやめました。昼間は眠くならずに起きていられますが、眠れないと肩が凝って頭がうまく働きません。何か病気なのでしょうか。眠れる方法を教えてください。



【答え】 不眠 -生活スタイルの改善を-

徳島大学保健管理センター医師 井崎ゆみ子

 不眠症は、次の3点を満たすものと定義されています。<1>寝つきが悪い(入眠困難)、目が覚めやすい(中途覚醒(かくせい))、早朝に目が覚める(早朝覚醒)など、睡眠とその質に問題がある<2>眠る時間、機会や環境に問題がないにもかかわらず、こうした睡眠障害が発生している<3>その結果▽日中の眠気▽けん怠感▽注意力・集中力などの低下▽生活や職業上の支障や機能低下▽気分がすぐれない・イライラする▽気力の低下▽ミスや事故を起こしやすい▽睡眠不足に伴う緊張や頭痛・消化器症状▽睡眠についての心配-のいずれか一つの日中の精神・身体機能の低下があることです。

 不眠は、さまざまな要因によって引き起こされますが、その要因は大きくまとめると▽疼痛(とうつう)、かゆみ、頻尿、せきなどの身体的要因▽騒音、照明、室温、寝具、慣れない環境などの生理学的要因▽ストレス、喪失体験、恐怖体験などの心理的要因▽うつ病、不安障害、統合失調症、認知症を含む脳器質疾患などの精神医学的要因▽内服している薬剤に起因する薬理学的要因-があります。

 不眠を治す際には、要因を検討し、その解消を目指して治療をすることや、睡眠に関する間違った習慣を改め、よい習慣を獲得することが大切になります。

 相談者は、入眠困難、中途覚醒があり、睡眠不足に伴う肩凝りや頭がうまく働かない感じに悩んでおられるので、不眠症の状態であると思われます。

 また、不眠は最近生じたとのことですが、それに先立ってか、もしくは同時期に何らかの生活上の変化はなかったでしょうか? 文面からは、仕事に支障を来したくないという思いが感じられ、また「戸締まりなどささいなことが気になり確認する」とあるため、自宅でも神経を張り詰めた状態が続いているのでは、と推測します。

 活動と休息の切り替えがうまくできない場合にも不眠は生じやすくなります。生活スタイルが「仕事や義務」ばかりに偏り「休息・リラックス」とのバランスが悪くなっている場合は、そのバランスを意識して回復するとよいでしょう。

 快適な睡眠のために気をつけた方がよい一般的なことを挙げてみます。▽カフェインなどの刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法(ぬるめの入浴、音楽、香りなど)を取ってみる▽早起きが早寝に通じるので、日曜日に遅くまで寝ているといったことはやめ、毎日同じ時刻に起床する▽朝目覚めたら日光を浴び、夜は明る過ぎない照明にする▽規則正しく食事をし、適度に体を動かす習慣をつくる▽睡眠薬代わりのアルコールは不眠の元になるのでやめる-などです。

 相談者は、睡眠薬を飲んでも仕事に支障を来したとのことです。市販の睡眠薬を内服されたのだと思われますが、医療機関では症状のタイプによって睡眠薬、抗不安薬を使い分けて処方しますので、より有効に、適切に症状の緩和につながります。症状が持続する場合は、医療機関の受診をお勧めします。

 また、特に▽気分が沈む▽好きなことをしても楽しくない▽体がだるい▽食欲がない-などの症状もあって持続する場合は、うつ病の心配がありますので、心療内科や精神科などの医療機関を受診するようにしてください。

徳島新聞2011年4月24日号より転載

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