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【質問】 全身に激しいかゆみ

 50代の男性です。全身のかゆみに悩まされています。皮膚科では、塗り薬を処方されたり、入浴時に石けんを使わないようにアドバイスされたりしましたが、効果がありません。暖かくなると自然に治るのですが、今年は寒暖の差が激しいためか、今も1日1~2回、激しいかゆみがあり、出血するくらいまで掻(か)いてしまいます。よい治療法はありませんか。



【答え】 皮膚そう痒症 -生活習慣を見直す必要も-

徳島赤十字病院 皮膚科部長 浦野芳夫

 かゆみは「掻破(そうは)したいという欲望を起こさせる不快な感覚」で、質問者のように、出血するくらいまで掻いてしまうこともよくあることです。そのつらさは経験してみないと分かりません。かゆみは多くの場合、発疹(ほっしん)を伴いますが、発疹がなくかゆみだけのこともあり、これを皮膚そう痒(よう)症といいます。

 かゆみは、末梢(まっしょう)性と中枢性に分けられます。かゆみを起こす刺激が、皮膚に広く分布する「かゆみ受容器」といわれる神経終末に働き、神経線維を介して大脳皮質に伝達されて生じるのが末梢性のかゆみです。このかゆみを起こす刺激はいろいろありますが、よく知られているのはヒスタミンという物質です。ヒスタミンの作用を抑える抗ヒスタミン薬が、じんま疹や湿疹など、さまざまなそう痒性皮膚疾患に使われます。

 中枢性のかゆみは、オピオイド(アヘン類似物質)が脳や脊髄(せきずい)の中枢神経に存在するオピオイド受容体に結合して生じます。代表的なものは、がん患者などが鎮痛剤として使用するモルヒネ(オピオイドの一つ)によるかゆみです。

 質問では、掻き傷以外には発疹がなさそうですので、皮膚そう痒症と思われます。皮膚そう痒症はさまざまな原因で生じますが、皮膚科で石けんの使用を控えるように言われたことや、暖かくなると症状が改善することから、ドライスキンに伴うものが考えられます。

 ドライスキンもまたいろいろな疾患で生じますが、最も多いのは、加齢に伴う乾皮症です。これは50代でも起こります。加齢とともに、汗腺、皮脂腺の機能が減退し、セラミドなどの角質細胞間脂質の合成低下や天然保湿成分の量が減少することが原因です。

 空気の乾燥した冬に悪くなり、発汗、湿気が多い夏には改善します。電気毛布やエアコンなどの暖房器具、過度の清潔志向による石けんの使い過ぎなどが悪化因子になります。生活習慣を見直す必要があるかもしれません。

 乾皮症では、かゆみを感じる神経が皮膚の表面近くまで伸びてきており、外からの軽い刺激でも容易にかゆみが生じます。従って、正常の皮膚では問題にならないような刺激でも、かゆみの原因になります。例えば、タオルで擦り過ぎることはよくありません。

 乾皮症は、抗ヒスタミン薬の内服のみでは効果が出にくく、保湿剤などの外用が必要です。外用剤を十分に塗布する必要がありますが、擦り込まないようにすることが大切です。擦り込む際の刺激でかゆくなり、掻いてしまうこともよくあります。

 乾皮症に伴う皮膚そう痒症では、皮脂腺や汗腺が多い顔面、頭部にはかゆみは生じません。質問では、全身がかゆいとのことですが、顔面や頭部もかゆい場合には、内臓疾患が隠れている可能性もあります。また、薬剤や心理的ストレスも原因になることがあります。かゆみはいろいろな原因で生じますので、改善しない場合には、皮膚科で再度相談されてはいかがでしょうか。

徳島新聞2011年4月3日号より転載

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