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【質問】 排便悪く薬の効果弱い

 26歳の女性です。便秘がひどく1年前から薬を飲んでいます。最近、薬の効果が以前よりなくなったような気がします。便秘を治すために、食事や生活習慣で気を付けることがあったら教えてください。薬以外にもよい方法があれば教えてください。



【回答】 便秘 -規則正しい排便習慣を-

松村内科胃腸科院長 松村光博(徳島市北佐古二番町)

 一般的に便秘は、数日以上排便がなく間隔も不規則で、便が硬く、排便時の苦痛や残便感、腹部膨満感、不快感、腹痛などの症状を伴います。便秘は、機能性と器質性、症候性、薬剤性に分類されます。中でも頻度の多いのが機能性便秘で、これはさらに直腸性、痙攣(けいれん)性、弛緩(しかん)性に分けられます。

 最も多いのが直腸性便秘です。直腸に便が到達しても排便ができないか、便意が生じないために、便が直腸に貯留します。便意をもよおしても通勤や通学の途中ですぐにトイレに行けなかったり、痔(じ)核など肛門(こうもん)部の病変で排便時に痛むために排便を我慢したりすることが原因となります。女性は、出産によって直腸と膣(ちつ)の間の壁が弱くなり、排便困難に陥る場合があります。また、日ごろの運動不足で消化管運動や緊張が低下することも原因の一つです。

 痙攣性便秘は、副交感神経の緊張が高まると腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発になり、腹痛などの症状が出現します。心理的ストレスが背景となっている場合もあります。弛緩性便秘は、腸の蠕動運動が低下した状態で、腹部膨満感が出現します。

 器質性便秘は、大腸がんなどの狭窄(きょうさく)による通過障害が原因です。症候性便秘は甲状腺機能低下症、パーキンソン病などの病気に基づくものが考えられます。薬剤性便秘は、抗うつ剤や抗コリン剤などの作用で腸の蠕動運動が低下して起きます。

 中でも、食事の欧米化や高齢者の増加とともに大腸がんにかかる人が増えています。大腸がんでないか受診することが重要です。問診を詳細に取り、器質性、症候性、薬剤性便秘を除外できれば、機能性便秘の可能性が高くなります。

 機能性便秘のうち、腹痛や腹部膨満感などの症状を主とする痙攣性および弛緩性便秘と、排便困難や残便感を主症状とする直腸性便秘とでは治療法が異なるため、区別する必要があります。下剤は、その作用によって腸の内容物を増加させて排便を容易にする機械的下剤と、腸粘膜を刺激して蠕動運動を促進させる刺激性下剤に分けられます。

 前者の下剤の中で、塩類下剤は習慣性が少なく長期間の使用も可能です。ただし、マグネシウムを含むものでは高Mg血症を来す恐れがあり、腎障害患者は注意が必要です。膨化性下剤は習慣性がなく、作用が緩やかなため、高齢者や痔の患者にも使用できますが、妊婦には慎重投与が必要です。

 刺激性下剤の中で、ジフェノール誘導体(ラキソベロン)は、習慣性がないため、幼小児、高齢者にも頻用されております。新レシカルボン剤は直腸性便秘に使用されております。心理的ストレスが背景となっている患者には抗不安薬、自律神経調整剤などを併用しております。

 質問では、長期間便秘薬を内服し、効果が薄れてきているとのことですが、同一薬を長期間内服していると習慣性を生ずるため、種類を変更するか、作用機序の異なるものを併用されてはいかがでしょうか。心因性が強い場合には抗不安薬、心理療法なども併用する必要があります。

 最後に、便秘症の改善には▽水分を十分取ること▽刺激性の食品を控え、豆類、根菜、海藻類など食物繊維を多く含む食品を食べること▽適度の歩行運動を行い、規則正しい排便習慣を付けること-が大切です。それでも改善しない場合は、医師の指導により症状に合う薬剤の使用をお勧めします。

徳島新聞2010年10月17日号より転載

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