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【質問】 階段上がるのがつらい

 80代の男性です。昨年、肺気腫と診断されて1カ月入院しました。退院後、夜は酸素吸入をしながら寝ています。しかし、階段を上がるのも息切れがしてつらい状態が続いています。根本的な治療方法はないのでしょうか。1日2箱くらい吸っていたたばこはやめましたが、これ以上悪化することはありませんか?日常生活で気を付けることがあれば教えてください。



【答え】 肺気腫 -禁煙継続や栄養改善必要-

徳島県立中央病院 呼吸器科 真鍋和義

 肺気腫は、喫煙などで有害な粒子を慢性的に吸入することにより、肺胞や末梢(まっしょう)気道が壊される病気です。一度壊れた肺胞は元に戻ることはなく、正常な肺を圧迫して気流を妨げるために、肺機能検査では閉塞(へいそく)性障害として検出されます。

 治療には、妨げられた気流を改善して息切れなどの症状を軽減する気管支拡張剤を使用します。気管支拡張剤には、長時間作用性抗コリン剤と長時間作用性β2刺激剤、ステロイド配合長時間作用性β2刺激剤があり、症状の改善具合によって使い分けます。

 臨床試験では、これらを継続して吸入することで、肺機能検査で1秒量(1秒間に吐く息の量)の年次的低下量の減少がみられます。肺機能が改善しなくても、運動耐容能(運動に耐える能力)や生活の質が向上することがあり、これが吸入治療を続ける理由といえます。痰(たん)が多い場合には、喀痰(かくたん)調整剤を使って肺機能の悪化を防ぎます。重症度が増して入退院を繰り返す場合には、吸入ステロイドを使用します。

 最近になり、階段の昇降などの労作によって息切れがつらく感じるということですが、それは労作時の酸素吸入が必要となっている可能性があります。労作時の酸素飽和度を測定して、運動時に低酸素血症とならない酸素吸入量を主治医の指示に従って決定しましょう。24時間連続した酸素吸入も必要かもしれません。対症療法ではありますが、慢性呼吸不全の患者に長時間酸素療法を行うことで、予後が延長できることが報告されています。

 息切れの改善のために、病院によっては、腹式呼吸や階段の昇降時の呼吸法も指導する呼吸リハビリテーションを行っています。基本的には、動きながら息を吐き、止まって息を吸うという動きになります。

 さらに、肺気腫の人はやせ型が多いため、標準体重の9割以上を保つように栄養改善も必要です。二酸化炭素の排出抑制のため炭水化物の過剰摂取を避けるとともに、高カロリー、高タンパクの食品を取るように心掛けましょう。

 禁煙は非常に重要で、肺気腫の進行を遅らせる効果があるので続けてください。また、気道感染を起こすと急激に肺機能を悪化させ、入院せざるを得ない状況にもなります。このため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種を行っておく方がいいでしょう。

 これらのことを守って、肺気腫とうまく付き合いながら、治療を続けてください。

徳島新聞2010年8月15日号より転載

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