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【質問】 少しの運動で胸に苦しみ

 40代前半の男性です。身長168cm、体重78kg、腹囲86cm。仕事がデスクワーク中心ということもあり、若いころに比べて運動量が減り少し肥満気味になってきています。最近、階段をかけ上がるだけで胸が苦しくなることがあります。しばらくゆっくり息をしていると治まりますが「狭心症では?」と不安になっています。健康診断は毎年受けています。中性脂肪182、LDLコレステロールは198、血圧は上が112、下が78でした。胸の痛みは、心筋梗塞(しんきんこうそく)や動脈硬化と関係があるのでしょうか。



【答え】 メタボリックシンドローム -該当しなくても注意を-

増田クリニック 増田 裕(板野郡藍住町矢上)

 動脈硬化は動脈が硬くなるだけではなく、動脈の狭窄(きょうさく)・閉塞(へいそく)を起こし、組織への酸素・栄養の供給が止まり、組織の壊死(えし)を引き起こします。特に、心臓に栄養を送る冠動脈が害されると、狭心症や心筋梗塞となって生死にかかわります。加齢とともに進み、70歳以上で顕著となります。加齢に伴う変化だけではなく、高血圧、糖尿病、高脂血症は、血管を害して動脈硬化を加速します。 狭窄(きょうさく)・閉塞(へいそく)を起こし、組織への酸素・栄養の供給が止まり、組織の壊死(えし)を引き起こします。特に、心臓に栄養を送る冠動脈が害されると、狭心症や心筋梗塞となって生死にかかわります。加齢とともに進み、70歳以上で顕著となります。加齢に伴う変化だけではなく、高血圧、糖尿病、高脂血症は、血管を害して動脈硬化を加速します。

 メタボリックシンドロームとは、腹囲が、男性で85cm、女性で90cmを超え、かつ<1>血圧高値(収縮期圧130、拡張期圧85以上)、<2>血糖高値(空腹時血糖110以上)、<3>脂質高値(中性脂肪150、HDLコレステロール40以下)の3項目のうち2項目以上に該当することと定義されていて、動脈硬化を起こしやすい人を早期に見いだすように工夫されています。

 ご相談の方は、身長168cm、体重78kgで、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った肥満の指標BMIは27.6(正常値は18~25)と、肥満に相当します。また、腹囲の86cmは男性の基準を超えています。一方、血圧は正常で、血糖も毎年受けている健診では指摘を受けていないようです。しかし、中性脂肪が182、LDLコレステロール198と脂質高値に該当します。

 以上から、この方は、メタボリックシンドロームの3項目のうち、満たすのは1項目のみで、メタボリックシンドロームには該当しません。しかし、メタボリックシンドロームに該当しないからといって安心はできません。

 高血圧、糖尿病、高脂血症の一つでも該当する場合は、その疾患に対する治療が必要です。この方は、高脂血症の治療が必要と思われます。高脂血症の治療は、まず食事療法・運動療法が基本ですが、それでも改善しない場合には薬物治療が選択されます。

 階段をかけ上がるときの胸苦を訴えられていますが、この症状からは労作性狭心症が疑われます。胸痛は心臓以外にも、大動脈、肺、消化器、胸壁、心因性などが原因で生じることがありますが、心臓などの重要臓器からの痛みでないことや、急を要する痛みでないことを確認しておく必要があります。

 かかりつけ医で、心電図、胸部レントゲン、血液検査など、基本的な診察・検査を受け、必要に応じて負荷心電図、24時間心電図、心エコー検査などの精査を受けてください。最近は、心臓カテーテル検査以外に冠動脈CT検査が可能となってきており、入院することなく冠動脈の状態を確認することができるようになってきています。

 この方の場合は、運動時に胸部症状があり、運動療法を開始する前には、必ず狭心症の確認をする必要があります。安易に、無理な運動療法を行うことは避けたほうがよいと思います。狭心症と診断された場合には、主治医と相談して狭心症の治療を優先してください。

 また、検査の結果、狭心症でなかったとしても、高脂血症を放置すれば、将来、動脈硬化を引き起こしし、狭心症・心筋梗塞を起こす恐れがあります。今のうちから高脂血症治療への取り組みが大切です。まずはかかりつけ医にご相談ください。

徳島新聞2010年2月7日号より転載

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