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【質問】 生後1ヵ月すぎ臍出てきた

 生後2カ月の男児についてです。臍(へそ)の緒がとれ、生後1ヵ月を過ぎるころから徐々に臍が出てきて、小児科で「臍ヘルニア」と診断されました。先生からはしばらく様子をみようと言われたのですが、このままにしておいていいのでしょうか?また、家庭ではどのようにケアしたらよいのでしょう。



【答え】 臍ヘルニア -1歳未満なら圧迫法有効-

徳島赤十字病院 小児外科 阪田章聖

 かわいいお子さんの臍の緒が取れてほっとしたのもつかの間、大事な臍が出たりへこんだりすれば、若いご夫婦はびっくりされるとともにご心配のことでしょう。でも、おそらく小児科の診断どおりだと思われます。

 臍ヘルニアは、臍の緒が落ちるまでに臍輪(さいりん)とよばれる筋膜が閉鎖しないため、腹膜を介して腸などのおなかの内容が臍の皮下に脱出することです。赤ちゃんが泣くと力が入りますので腹圧が上がり、そのたびにヘルニアが出てきますが、就寝中などはへこんでいるのが通例です。

 このヘルニアは、臍の緒が取れて1ヵ月以内に出てくることがほとんどで、生後1ヵ月検診や3ヵ月検診で指摘されることが多いようです。自然に治癒することが多く、そのまま経過を見ても約8割は治るようですが、数%はそのまま残るようです。

 2歳を過ぎると自然治癒が期待できないので、手術的治療が望まれます。ヘルニアによる合併症は少ないのですが、中にはカントンといって、腸などが脱出して最悪の場合は腸管などの壊死(えし)をきたしますので注意が必要です。

 また最近では、美容上の観点やいじめの危惧(きぐ)から早期の手術を希望される場合もあります。自然治癒が多いといっても治らない場合もあり、心配するお気持ちは十分察することができます。

 このため当院では、約10年前から臍の圧迫法を取り入れています。この方法は欧米ではやや否定的でしたが、生後3ヵ月の検診で指摘された時点から圧迫法を行うと、数ヵ月で治癒するようです。ほかの施設の報告でも、この圧迫法の有用性が指摘されているので、可能なら生後数ヵ月以内から試みてください。

 その場合、専門医の指導を受けてから行ってください。この圧迫法は1歳を過ぎてから行っても効果は少ないようですので、できたら早めにお願いします。

 自然治癒が期待できない場合は、手術的治療が望まれます。施設によりその時期は異なりますが、私たちは2歳以降、3歳ぐらいまでを一つの目安にしています。手術に関しては、小児外科医やヘルニアを多く手がけている専門医の意見を参考にしてください。

 入院期間は1泊2日から2泊3日くらいが多いようです。臍の病気には、白線ヘルニア、臍肉芽、臍腸管遺残や尿膜管遺残などもあり、小児外科やその専門医を受診されることをお勧めします。

20090809臍ヘルニア

徳島新聞2009年8月9日号より転載
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