【質問】 40代でも発症?予防法は
40代の男性です。先日、病院で「大腸憩室炎」と診断されました。高齢者のかかる病気と聞きましたが、40代でも起こるのでしょうか。治療や予防法について教えてください。
【答え】 大腸憩室炎 -生活習慣改善 心掛けを-
大塚外科・内科 大塚雅文(徳島市川内町)
「大腸憩室炎」の話をする前に、まず、消化管の憩室について説明します。
憩室とは、消化管の壁が管腔(かんくう)の外へ袋状に飛び出した状態のことです。食道や胃、十二指腸、小腸にも起こりますが、大腸に最も多く見られます。
ほとんどが後天性で、加齢などで消化管壁が弱くなり、管腔内圧の上昇を繰り返すことによって、粘膜が筋層を押し分けて管外に突出し、しょう膜とともに憩室を形成すると考えられています。
80歳を超えると75%の人に憩室が見られるとも言われています。40歳以上の剖検例の45%で見られたという報告もあり、近年若年化の傾向にあります。欧米人では左側結腸に多く、日本人では70~75%が盲腸などの右側結腸に発生すると言われています。
憩室発生の誘因には、繊維成分の少ない食事の摂取が挙げられます。食物繊維が少ないと糞便(ふんべん)の量が減り、その少ない便を送り出すために、大腸壁が強く収縮する必要が生じます。すると腸管内圧が異常に高まり、その結果、大腸憩室が次々と形成されるのです。憩室が多発した状態を「憩室症」と言います。
通常、大腸憩室のほとんどは無症状に経過し、注腸レントゲン検査や大腸内視鏡検査をした際に、偶然発見されることが多いです。治療を必要とする主な合併症としては、憩室炎のほかに、出血、穿孔(せんこう)、膿瘍(のうよう)形成、ろう孔形成などが挙げられます。
出血は、国内では全大腸憩室の4%弱に起こると言われていて、無痛性の血便として発症。まれに輸血を必要とすることもあります。憩室が穿孔を起こすと、腹膜炎や膿瘍形成に進展し、ときに重篤な結果をきたすことがあります。
ご質問にある「大腸憩室炎」は、欧米では憩室症の約15%、国内では約2.5%に発生する合併症と言われております。腹痛、発熱などを呈し、特に盲腸付近の憩室炎は急性虫垂炎との識別が困難です。血液検査では白血球が増加し、CTや超音波検査なども有力な診断法です。
治療は、原則として保存療法です。食事制限、輸液、抗生物質投与で大抵は治癒します。軽度の場合は、食事制限をしなくても経口の抗菌剤のみで十分な場合もあります。
穿孔、膿瘍形成、ろう孔形成、大量出血のために保存的治療が困難なときは手術療法が選択されます。大腸憩室自体は治る疾患ではありません。むしろ徐々に数が増えることが予想されます。
予防のためには、まずその原因である腸管内圧上昇に対し、便通および体重のコントロールをすることです。十分な食物繊維を摂取し、過労や睡眠不足を避けて適度な運動を取り入れるなど、生活習慣の改善を心掛けてください。