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【質問】 交通事故後のしびれ治療法は

 64歳の女性です。3カ月ほど前、単車の運転中に乗用車と接触し、頸椎(けいつい)捻挫(ねんざ)で全治3週間と診断されました。しかし、いまだに右手がしびれて思うように動きません。整形外科を受診しようと思うのですが、どのような治療をするのでしょうか。また、治るまでにどれくらいかかるのでしょうか。



【答え】 頸椎捻挫 -保存的治療行い安静に-

橘整形外科 橘 敬三(徳島市寺島本町西)

 交通災害の中では、主として追突によるむち打ち損傷が、依然多く発生しています。骨折などほかの外傷と比べると、軽度な傷害といった印象があるものの、難治例があることも事実です。治癒の遷延化は、被害者の心身の苦痛や社会的損失を招くことになります。読者の皆さんも、年末から年始にかけては自動車で移動する機会が増えると思いますので、くれぐれも安全運転でお願いします。

 外傷性頸部(けいぶ)症候群は、どのような状況で事故に遭ったかという受傷機転や程度により、むち打ち、頸部打撲、頸椎捻挫、頸椎挫傷などが含まれます。症状も多彩で、頸部痛や上肢痛、頭痛、腰痛に始まり、感覚障害、筋力低下、視力低下、耳鳴り、聴力低下、めまいなどを訴えられる場合もあります。

 さらに、一時的に記憶障害や軽いうつ状態を認める場合もありますので、脳外科、眼科、耳鼻科、精神科など各科との連携が必要なこともあります。しかも、社会的な補償問題も複雑に絡み合い、極めて厄介な問題として現在まで受け継がれている一面もあります。

 診断は、診察、エックス線検査、症状によっては電気生理的検査やCT検査、MRI検査を追加することにより行います。画像診断では、既存の頸椎の変形がないか、今回の外傷により骨折や周辺の軟部組織の損傷がないかを調べます。無症状でも、頸椎の変形のある人や治療歴のある人は症状が出やすいので、特に外傷に対しては注意が必要です。

 病院では、原則として保存的治療を行います。受傷後数日は安静にし、読書など目の疲れる作業を控えてもらうことが重要です。どうしても仕事が休めないなどの理由で、安静加療ができず、予想以上に症状が悪化して気持ちが動転される人もいるので注意が必要です。

 頸椎カラーなど頸椎固定装具を使用する場合もありますが、長期の使用は頸部の筋肉を痩(や)せさせるので、使用期間は受傷後1週間程度にとどめてもらうようにしています。強い頭痛や頸部痛、めまいなどに対しては投薬により症状を緩和させます。

 また、肩こりや頭痛など筋肉の緊張が原因と思われる場合は、各種ブロック注射やリハビリテーションを行います。治療を行っても症状が遷延化する場合はほかの疾患の合併がないか再検査を行います。

 今回のご相談では、まだ手のしびれや運動障害が改善していないとのことですので、主治医に、もう少し治療を続けるべきか、専門医を紹介してもらうか、よく相談してもらいたいと思います。

徳島新聞2008年12月21日号より転載

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