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【質問】 外陰部のかゆみ治したい

 60代の女性です。昨年始めから、外陰部のかゆみに悩まされています。かゆくなると我慢できなくなるため、皮膚科を受診しました。ソンデロンVG軟こうをもらって塗布しています。最初は2~3日に一度、塗ればよかったのですが、今は1日1回塗らなければかゆくなります。副腎皮質ホルモンも含まれているので副作用が心配です。かゆみを抑えるだけでなく、根本から治す方法はないのでしょうか。カンジダ、トリコモナス菌の検査は異常ありませんでした。体の他の部位は特にかゆくありません。恥ずかしいことですが、思い切って相談させていただきます。



【答え】 皮膚そうよう症 -下着の種類変更で軽快も-

徳島大学医学部 皮膚科 福本 大輔

 外陰部のかゆみについてのご相談ですね。同様の悩みを持っている人も多いと思います。また、一般の皮膚科外来で診療している医師なら、よく相談を受ける内容だと思います。

 明らかな湿疹(しっしん)があったり、カンジダや白鮮(はくせん)(足にできれば水虫、体にできればタムシといいます)があったりと、かゆみの原因となる目に見える皮疹がある場合は比較的簡単に診断でき、それぞれに効果のある外用剤を中心とした治療で治ることが多いです。

 しかし「皮膚に何もできていないけれども、かゆみだけがある」という状態に対して、患者の納得できる治療が十分できているかといわれると、難しいところです。まず、視覚から情報のほとんどを得て診療に当たる私たち皮膚科医にとって、最も苦手とするところといって過言ではないのです。

 さて、皮膚に何も変化がないのにかゆみだけある状態を皮膚そうよう症といいます。全身性と限局性のものがありますが、外陰部は限局性そうよう症が起こりやすい代表的部位です。命にかかわる疾患ではないために軽視されがちですが、一般的なかゆみ止めの内服薬や外用剤では治りにくく、症状が長期にわたって持続することも多いようです。

 男性では非淋菌(りんきん)性尿道炎や前立腺炎、女性では腟カンジダ症や腟トリコモナス症が原因となることがある、と皮膚科の教科書に書いてあります。しかし、経験的にはこれらの感染症よりも、汗や尿により過剰な湿潤状態になることや、下着や生理用品による刺激が外陰部皮膚そうよう症の増悪因子となっていることが多いようで、下着の種類を変更したり重ね着をやめたりするだけで軽快することもあります。

 特に近年は、吸水性や保温性、運動性に優れた下着が専門店やスポーツ用品店などで販売されています。元プロ野球選手の新庄剛志さんがテレビのコマーシャルで「ちゃんとした下着をはこう」と言っていましたが、そうした下着も試してみるとよいと思います。

 実際に私たちが治療で使用する薬剤について説明します。副腎皮質ステロイド入りの外用剤は本来、前述の明らかな皮疹がある湿疹に対して使用すべきものと考えています。ただし、外陰部皮膚そうよう症に対して最も効果があるのも確かなことで、ステロイドが配合されていない外用剤が効かない患者にはよく処方しています。

 必要以上に強力なステロイド外用剤を漫然と使い続けることはお勧めできませんが、皮膚科医の指導のもとで処方された外用剤を使うことについては問題ないと思います。そのほか、目で見て変化がある外陰部の皮膚疾患にもかゆみを伴うものがありますので、かかりつけの皮膚科の先生に相談してみてください。

徳島新聞2007年2月4日号より転載

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