【質問】 手足しびれ腰痛ひどい
66歳の女性です。10年ほど前から変形性膝関節症で両足にしびれがあり、正座ができません。また、28年前から高血圧、4年前から糖尿病を治療しています。3年前には頸椎後縦靭帯骨化症(けいついこうじゅうじんたいこっかしょう)と診断され、指先にしびれがあります。3年ほど前、散歩中にお尻の辺りがしびれて熱く感じ、足がもつれて歩けなくなりました。少し休むと和らいで歩けました。最近、就寝中に足から腰にかけて飛び上がるほどの痛みが三度あり、急に手足のしびれや腰痛、ひざの痛みがひどくなりました。MRI検査をすると、腰部脊柱管狭(ようぶせきちゅうかんきょう)窄症(さくしょう)と診断され、現在、オパルモン錠を服用しています。できるだけ手術は避けたいと思っています。他に治療法はないのでしょうか。
【答え】 腰部脊柱管狭窄症 -保存療法で経過観察必要-
小松島リハビリテーションクリニック 竹内 錬一 (小松島市日開野町宮免)
加齢などさまざまな原因で、腰の骨や関節、軟骨、靭帯の性質が変わって形状が変化することがあります。それによって神経の通り道である脊柱管が狭くなると、神経や神経根が圧迫され、腰痛や下肢のしびれ、痛みが生じます。これが腰部脊柱管狭窄症です。神経とともに脊柱管を通る神経栄養血管の圧迫による血流低下も、症状の発現に関係していると考えられています。
最も特徴的な症状は、下肢の痛みやしびれで長く歩き続けられず、腰を前にかがめて休むと楽になって再び歩けるという間歇性跛行(かんけつせいはこう)です。長く立ち続けたり腰を後ろに反らせたりすると、下肢の痛みやしびれがさらに強くなることもあります。狭窄が進行すると、排尿や排便を支配する神経も影響を受けることがあります。
相談者の病状を文面から推察すると、十年来の変形性膝関節症によるひざの痛みのため、長く歩き続けられない可能性も考えられます。また、糖尿病性神経症のために下肢がしびれる可能性も否定できません。さらに、糖尿病による動脈硬化があれば、閉塞(へいそく)性動脈硬化症による下肢の血流障害で、腰部脊柱管狭窄症に似た血管性の間歇性跛行の症状を示すこともあります。
特に、この下肢の血流障害による血管性の間歇性跛行は、腰部脊柱管狭窄症によるものとはっきり区別を付けなければなりません。そのためには足の動脈の脈拍が触れるかどうかを調べ、必要に応じて足と上腕の血圧を比較検討することが重要です。
このほか、頸椎後縦靭帯骨化症が指のしびれだけでなく、下肢のしびれや筋力低下を起こし、歩きにくくなる症状を引き起こすことも考えられます。
次に、就寝中に腰から下肢にかけて強い痛みがあったことについては、腰からの神経症状として考えられないこともありませんが、普通は横になると神経の圧迫が多少は緩むので、その痛みの原因が腰部脊柱管狭窄症によるものとは判断しかねます。
MRIによる検査は、この病気の診断に広く用いられます。しかし、MRIで見られる神経圧迫部位が、神経症状と一致するかどうかを十分に検討しなければなりません。多少の圧迫があっても症状の原因とならないこともあり、MRIが診断の決め手にならない場合もあります。
治療は、多くの場合は鎮痛剤やビタミン剤、相談者が服用中のオパルモンといった神経の血流を良くする薬などで保存療法を3-6カ月間行います。強い下肢痛がある場合には、腰周辺の背骨の間に麻酔薬を注入して痛みを取り除く硬膜外ブロックや、神経根に痛み止めを注入する神経根ブロックも選択されます。
保存療法の効果がなければ、手術を検討します。手術は一般的に▽下肢にまひがある場合▽膀胱(ぼうこう)や直腸に障害がある場合▽5分以内に間歇性跛行がある(200-300メートル歩くと休まなければならない)場合-に日常生活への支障が大きいので必要と考えます。
手術は<1>圧迫された神経の除圧<2>腰椎の固定術<3>何らかの器具や金属を腰椎に入れるインストゥルメンテーションを腰椎固定術に加える-が基本で、これらを組み合わせて行いますが、第一の目的は神経の圧迫を除くことです。そのために椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部分を切除する手術をします。詳しい手術方法は各患者の症状や検査結果を詳細に検討して決められるべきで、ここですべてを述べることは難しいと思います。
手術は前述した適応症状があれば早い方がよいと考えますが、最終的には手術をされる医師の説明を十分に聞き、ご自身で意思決定することが必要です。相談者は病気がいろいろと重なり、それぞれが歩きにくくなる原因となっている可能性があります。従って、病状をさらに詳細に評価し、保存療法を行いながら経過を見ることが必要と思われます。主治医に相談されることをお勧めします。