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【質問】 声がかすれて治らない

 79歳の女性です。2カ月ほど前から、風邪もひいていないのに声がかすれてしまい、治りません。もともとは澄み切った声でした。年を取ると変声するのでしょうか。それとも声帯に何か異常があるのでしょうか。このままほっておけば自然によくなるのでしょうか。



【答え】 嗄声 -疾患により異なる診療法-

記本耳鼻咽喉科クリニック 記本 晃治(名西郡石井町高川原)

 のどには喉頭(こうとう)という器官があります。喉頭の機能としては呼吸機能や発声機能などがあります。喉頭には声帯があり、息を吸うときには声帯が開き、発声のときには声帯が閉じて息をはく圧を利用して振動することにより声が出るようになっています。

 この声帯に異常が起こると、声がかすれてきます。声がすれのことを医学的に嗄声といいます。嗄声をきたす主な疾患について、簡単に説明します。

 〈声帯ポリープ〉声帯ポリープは多くの場合、声帯の片側に生じる腫瘤(しゅりゅう)です。原因としては、声の酷使や過度のせき、せき払いなどによる機械的刺激によって、声帯粘膜に血液循環障害や出血が起こることによると言われています。治療は、初期の軽い病変の場合には沈黙療法などで治る場合もあります。高度な病変などでは、手術的切除が必要になります。

 〈声帯結節〉主に声帯の両側に生じる小さい隆起です。歌手や教師など声を過度に使う職業の人にできやすい特徴があります。声の酷使を避けるなどの保存的治療で良くなります。改善しない場合には、手術的切除を考慮する場合もあります。

 〈ポリープ様声帯〉喫煙などによる慢性炎症により生じるもので、声帯が水膨れ状態になります。声が低くなり、程度がひどくなると呼吸困難をきたすことがあります。

 〈喉頭がん〉早期の場合は放射線治療やレーザー手術で完治します。進行すると、喉頭の摘出手術が必要で声を失ってしまうため、早期発見が重要です。喫煙との関係が深く、1日に吸うたばこの本数と喫煙年数を掛け合わせた数が600を超えると喉頭がんの危険性が高まるので、愛煙家の嗄声は要注意です。

 〈声帯溝(みぞ)症〉加齢変化などにより声帯が委縮し、発声時に声帯にすき間ができることにより嗄声を生じます。「声が出しにくい」「声を出すと疲れやすい」などの症状があります。

 〈喉頭まひ〉声帯運動まひにより「声が出ない」「息が漏れて長く声が出せない」などの症状があり、しばしば誤嚥(ごえん)(物を飲み込むときにむせる)を伴います。甲状腺腫瘍、肺・食道腫瘍、胸部大動脈瘤などによるまひであることも多く、原因疾患の検索が重要です。

 ご質問では、風邪の症状がないことや、嗄声が2カ月間と長く続いていることから、喉頭の炎症によるものとは考えにくいと思われます。また、もともと澄み切った声がかすれてきたとのことですので、声帯に何らかの変化が起こっているものと思われます。

 加齢による声帯委縮が生じ、嗄声が起こっている可能性もありますが、前述のように嗄声をきたす疾患はさまざまで、疾患によりその治療法も異なります。喉頭を診れば比較的簡単に診断のつく疾患も多く、治療を急がなければいけない疾患もありますので、できるだけ早期に近くの耳鼻咽喉科を受診し、喉頭鏡検査あるいはファイバースコープ検査を受けることをお勧めします。

徳島新聞2006年10月29日号より転載

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