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【質問】 両腕や目にたびたび出血

 71歳の男性です。血小板減少性紫斑病と診断され、1年間、ステロイドを投与して血小板はほぼ回復しました。しかし、紫斑病の方は2~3カ月前から両腕や目の白い部分に出血が出て1週間ほどで消え、必ずまたすぐに出ます。高齢だけに血管ももろくなっているのかなと思いまずが、何かよい治療法はないのでしょうか。



【答え】 血小板減少性紫斑病 -ITPは再燃、再検査を-

川内内科 川内 茂徳(徳島市鮎喰町2丁目)

 紫斑病は皮下の血管が破れ、皮下に暗赤色の出血斑ができる出血性の病気です。出血性疾患は原因別に次のように分類できます。

 1 血管の異常

 2 血小板の異常(<1>血小板の数が減少している<2>血小板の数は正常であるが、働きが悪い)。

 3 凝固因子(血液を固める因子)の欠乏

 4 凝固阻止因子や血栓溶解因子の増加

 1と2の<1>について少し説明します。血管の異常による出血についてですが、老人性紫斑病は老人に慢性に出現する紫斑病で、出血斑が手背や前腕、顔面に多く現れます。原因は皮膚のコラーゲン、弾力組織、皮下脂肪組織の変化または減少によるといわれています。老化によって皮下の組織が動きやすくなり、小血管が損傷を受けやすくなるためです。

 治療としてビタミンCが用いられることもありますが、効果ははっきりしません。単純性紫斑病は若い女性に多くみられる紫斑病で、四肢、特に下肢によく現れ、紫斑の部分が硬くなったり、多少の圧痛を訴えることもあります。季節の変わり目にできやすく、毛細血管の抵抗が弱いためにできます。

 その他、膠原(こうげん)病や悪性腫瘍(しゅよう)に伴う血管炎による紫斑病、小児の病気でアレルギーが関与するアレルギー性紫斑病、遺伝性の病気であるオスラー病、薬剤性紫斑病、ビタミンC欠乏症など紫斑を呈する疾患は多数あります。

 血小板の数が減少するために出血症状がみられる病気としては、まず特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が挙げられます。ITPは、血小板の膜に対する自己抗体ができ、この抗体が血小板と結合し、結合した血小板は脾臓(ひぞう)で破壊されます。次々と血小板が破壊されて血小板の数が減ります。

 この病気には急性型と慢性型があります。急性型は小児の病気で、6カ月以内に治癒します。一方、慢性型は成人の病気で、一時よくなってもしばしば再燃がみられます。ITPとは、一般的にはこの慢性型を指します。

 血小板数が10万マイクロリットル(1マイクロリットルは1,000分の1ミリリットル)以下をITPと診断します。血小板数が3万マイクロリットル以下や、3~5万マイクロリットルで出血症状がある場合、特に口腔内や鼻からの出血がある場合、治療の対象となります。5万マイクロリットル以上あれば普通は出血症状は見られませんから、経過観察をします。

 治療としては、副腎(じん)皮質ホルモン剤やγ(ガンマ)-グロブリン製剤、蛋白(たんぱく)同化ホルモン剤、免疫抑制剤の使用や、脾臓の摘出などが行われています。その他、ヘリコバクターピロリ菌が陽性の人では、除菌によって半数の人で血小板数が増加したとの報告もあります。

 ITP以外では、薬剤による血小板減少症もときどきみられます。また、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、白血病など血小板の産生の障害による病気を鑑別しておかねばなりません。狭心症や脳梗塞(こうそく)などの動脈硬化性疾患を防ぐために用いられる薬剤の使用によっても、鼻出血や紫斑を起こすこともあります。アスピリンやワーファリンなどです。

 文面からは、血管の異常による紫斑が推定されますが、ITPは再燃もしばしばみられるため、再度受診して検査を受けられることを勧めます。

徳島新聞2006年6月25日号より転載

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