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【質問】 腕のボツボツについて

 16歳の娘のことです。小さいころから、ひじより上の外側と肩のあたりに小さいボツボツがあり、肌がザラザラして見た目にもよく分かります。幼稚園のころ、皮膚科で毛孔(もうこう)性苔癬(たいせん)といわれたように思います。塗り薬をもらいましたが、効果がありませんでした。小さいころはあまり気にしていませんでしたが、最近は半そでも着なくなりました。もう一度、病院へ行こうと思いますが、やはり皮膚科に行けばいいのですか。よくなる治療法はないのか教えてください。漢方薬なんかはどうですか。



【答え】 毛孔性苔癬 -外用剤の対症療法が主体-

さかお皮フ科クリニック 坂尾 佳久(徳島市国府町井戸)

 ご質問の毛孔性苔癬は、日常しばしばみられる皮膚疾患の一つです。まず、その症状や原因などについて説明します。

 発疹(ほっしん)は皮膚の毛穴があるところにできます。円すい形をした角化性の丘疹で、上腕や太もも(伸ばす側)、肩などに多発し、左右対称性がみられます。小さな白色の角化物(角栓)が毛穴をふさいだ状態が特徴で、全体に皮膚は乾燥していることが多いです。

 角化性丘疹が密に集まっている部分は、触れるとおろし金のようなザラザラした感じを与えます。丘疹の色は正常皮膚色または淡紅色で、自覚症状はほとんどありませんが、ときに軽度のかゆみを訴える場合があります。

 小児期に出現し、思春期に最も多く認められます。一般に20代以降は加齢とともに次第に軽減し、30代に自然に消えていきます。小学校高学年の約20%、また健康な人でも44%にみられるという報告もあり、このような高頻度の発症から、この疾患を生理的な現象であるという考えもあります。女性に多いとされますが、男性も珍しくありません。

 原因については、遺伝性素因に基づいて発症するとされ、家族内発生も多くみられます。常染色体優性遺伝もしくは多因子遺伝が推定されています。従来よりホルモン代謝異常、脂腺機能異常、ビタミンA代謝異常などが関与している可能性が指摘されています。

 また、尋常性魚鱗癬(ぎょりんせん)、アトピー性皮膚炎、肥満などがある場合には発症率が高いことが報告され、乾燥で悪化する傾向があります。病理組織学的には、毛穴が開大し、内壁をなす角層は顕著な角栓を形成し、皮膚の表面に突出している所見が特徴です。

 次に治療について述べます。本症は遺伝的関与が高く、根本的治療が困難であることから、実際の治療は外用剤による対症療法が主体になります。サリチル酸、尿素、ヘパリン類似物質などを含有する軟こうが使用されることが多く、これらの製剤は増殖した角質を溶解するとともに、角質の水分保持能力を増強する作用があるので、ザラザラ感を軽減させることができます。

 重症例には密封療法が有効です。最近では、一部の角化症疾患に有効な活性型ビタミンD3外用薬が本症にも使用され、改善がみられた報告があります。保険適応外ですが、難治例には試みてよい治療と考えられます。なお、活性型ビタミンD3外用薬は、血清カルシウム値を上昇させる副作用がありますので、使用には注意が必要です。

 内服療法では、エトレチナート(ビタミンA誘導体)が有効とされていますが、催奇形性などの副作用があり、使用すべきでないと考えます。また、現在のところ、ご質問の漢方薬で改善がみられたという報告は、調べた限りはないようです。

 本症では、美容的観点から女性患者が受診することが多く、精神的に悩まれている場合もあります。一般に加齢とともに軽減し、自然治癒することを説明し、前述の外用剤による治療を行っているのが現状です。ご質問からして、ご本人は気にされているようですので、一度、専門の医師に相談されることをお勧めします。

徳島新聞2006年5月14日号より転載

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