【質問】 腰痛・脚にしびれ
22歳の独身女性です。介護の仕事を3年間していましたが、腰痛、脚のしびれなどがあって辞めてしまいました。先日、整形外科でMRIなどの検査をし、ヘルニアと診断され、軽い炎症があるので痛みがあると聞かされました。早く完治したいのですが、よい治療法はありますか。手術は絶対にしたくありません。軽いスポーツや水泳などをすればどうかなと思っています。コルセット、薬などは使用していません。歩くのは不自由ありません。
【答え】 腰椎椎間板ヘルニア -生活スタイル考慮し治療-
谷医院 谷 義彦(小松島市立江町江ノ上)
腰椎椎間板ヘルニアは、腰痛、下肢痛をきたす疾患として広く知られています。現在ではCTやMRIにより、画像上のヘルニアの有無を比較的容易に判断できるようになっています。
2005年「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」によりますと、有病率は人口の1%、手術患者は人口十万人当たり年間46.3人、男女比はほぼ3対1、年齢は20-40代、第四腰椎-第一仙椎間に多く発生するとの報告があります。
腰椎椎間板ヘルニアの発生に影響を及ぼすものとしては、具体的には労働や喫煙が挙げられ、最近は若年者のヘルニアで遺伝的要因が指摘されています。
画像診断技術の発達により、ヘルニアのサイズが大きいものや遊離脱出したもの、MRIでリング状に造影されるものは、自然に縮小する確率が高くなっていますが、縮小するまでの期間や縮小するヘルニアの割合は明確になっていません。
腰痛のみの椎間板ヘルニアも存在します。下肢症状を代表する座骨神経痛は膨隆型(椎間板が膨隆して神経を圧迫している)に比べて脱出型(椎間板の髄核が脱出したもの)の椎間板ヘルニアにより強く認められ、下肢症状の発現機序としては圧迫より炎症との関連が考えられています。
非手術治療の評価については、腰椎椎間板ヘルニアの自然経過のデータが不足していること、マニプレーション(整体、カイロプラクチック)や牽引(けんいん)療法についてはその研究が不十分であり、対立する意見がきわめて多いことを指摘しています。非ステロイド性抗炎症薬も、腰痛に対しては有効性を示しますが、椎間板ヘルニアに対しては効果を十分に示すことはできていません。
手術治療の適応は、急性の膀胱(ぼうこう)直腸障害を呈したもの、進行する神経症状を呈するもの、あらゆる保存療法が無効な場合です。
椎間板ヘルニア患者が治療法を選択する際には、障害の程度だけでなく、個々のライフスタイルを考慮して決定していく必要があります。
今回ご質問の方は、仕事を辞められたことで症状が多少でも軽快されてきているのか、痛み、しびれの強さや範囲はどうかということを確認するとよいでしょう。腰椎椎間板ヘルニアの保存療法は、整形外科的治療以外にも、東洋医学、医療類似行為、民間治療と実に多彩ですが、科学的に評価できるすぐれた特効薬、施術はないということです。
軽いスポーツや水泳とのことですが、スポーツに関しては、今のところヘルニアの発生を誘発するとも抑制するともいえないとされています。スポーツはご自分の痛みやしびれを強くさせない運動をお選びください。筋力増強は症状軽快後の職場復帰を早めるでしょう。