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【質問】 ゴリゴリと背骨が鳴る

 76歳の女性です。夜休むときや、時折、背骨を曲げたときなどにゴリゴリと骨の鳴る音がします。検診時の身長が若いときは162cmでしたが、154.6cmになっています。3年前に流感にかかり、食障害というのか、ご飯が食べられなくて体重が10kg落ちました。3カ月で9kg回復し、51kgです。今は食事はおいしくいただき、夜はよく眠れ(6時間)、途中に目は覚めません。トイレも朝起きるまで行きません。血圧は朝食前、上が146-150、下が86-89で、アダラートCR20を朝に1錠のんでいます。軟骨が少なくなっているのでしょうか。カルシウムとかの薬をのむほうがいいのでしょうか。



【答え】 骨粗しょう症 -運動習慣や治療薬服用-

杉みね整形クリニック 院長 杉峯 雅彦(板野郡藍住町東中富)

 ご質問の患者さんですが、若いときから便秘で悩まれているとのことで、慢性便秘があるものと思われます。高齢者の慢性便秘で最も多いのは弛緩性便秘です。大腸が非常に長くなって下垂し、腸の緊張、運動の低下により便秘をきたします。最近特に症状が悪くなったのは、何らかのきっかけで食事量が減り、そのために慢性便秘が増悪し、悪循環を繰り返しているのかもしれません。

 症状の憎悪の原因として他に考えなければならないのは、第1には器質性便秘(腸が大腸がん、胃がん、膵臓がんなどで細くなったり癒着をきたしたりして、形に異常を起こしたもの)が加わっていないか、大腸内視鏡検査、バリウムを使った注腸X線検査などが必要と思います。最近、大腸がんの増加が目立っています。高齢でどうしても検査がいやな場合は、とりあえず便検査で便潜血反応を受けてみてください。

 第2に、症候性便秘といって糖尿病、甲状腺機能低下症、脳梗塞などの全身疾患の異常から便秘をきたすことがあります。また高齢者で精神的要因が強い場合は、うつ病かどうかもチェックしておいた方がよいでしょう。かかりつけ医に相談してみてください。

 第3に、薬剤により便秘がひどくなることがあります。抗コリン剤(腹痛止め、神経因性ぼうこう炎などの薬)、精神科の薬などの連用には注意が必要です。

 この方の治療ですが、原因がはっきりしていないので特定できませんが、一般的な慢性便秘の治療について考えてみましょう。

 最初に排便のメカニズムの説明ですが、まず胃に食事が入ると大腸(結腸)が収縮(胃結腸反射といいます)し、直腸に便が送られます。直腸に便がたまると直腸壁の刺激に対する反射(排便反射)で排便が起こります。しかし高齢者の場合、歯が悪いなどの理由で食物繊維の少ないものばかり摂取したり食物摂取量が少なくなったりすると、大腸粘膜への刺激が弱まり通常のメカニズムが行われず便秘しやすくなります。また、便所に行くのがおっくうで我慢していると、直腸への刺激反射が弱くなり同じく便秘が起こります。

 前記の排便のメカニズムを考え、生活習慣を改めてみましょう。生活指導として起床時に水分を摂取し、食べ物をよくかみ、食物繊維をとり、規則正しい食事をしましょう(起床結腸反射、胃結腸反射の促進)。この患者さんの場合は、食物繊維は最初は消化のよい水溶性のもの(リンゴ、バナナ、モモ、ダイコンなど)がよいでしょう。また、ガスの異常発酵を少なくするため善玉の腸内細菌の入ったヨーグルトなどの乳酸菌飲料を定期的にとると効果があります。直腸への刺激反射を回復するために朝食後はなるべく規則的にトイレに行く習慣をつけてください。

 このような生活、食事習慣に気をつけたうえで毎日の排便を習慣づけるために、補助的に薬物療法を検討してください。薬物療法は西洋薬では便水分を増量させる酸化マグネシウム(カマグ)、蠕動(ぜんどう)促進剤のパントシンを合わせたものを定期的に内服し、それでも排便がない場合はラキソベロンなどの粘膜刺激剤を用います。しかし、西洋薬ではバリエーションが少なく、漢方治療の方が有効なことが多いと思います。漢方薬には多種類の便秘薬があり、かかりつけの医師と相談されて、患者さんに合ったものを見つけるとよいと思います。

徳島新聞2006年4月30日号より転載

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