徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 睡眠薬を続けていいか

 70代の主婦です。2~3年前から不眠でしたが、よく眠れる夜もありました。ただ、今年に入ってからは床に入ってすぐ眠っても、午前2時ごろ目が覚めると朝まで眠れません。時々かかりつけの病院で薬をもらってのむと、5時間ぐらいはぐっすり眠れるのですが、あまり薬に頼り過ぎるのはいけないと思ってやめていました。しかし、2月ごろからは薬がなくては眠れなくなりました。病院の先生は「今の薬は良くなったので、続けてのんでも体に害はありませんから、続けてください」と言います。先月も1カ月分もらって帰りましたが、続けてのんでもいいんでしょうか。薬名はアモバンで、2分の1錠ずつのんでいます。



【答え】 不眠症 -医師の指示で正しく服用-

オクトクリニック 岡田 敏寛(徳島市佐古二番町)

 まず、不眠について一般的に説明してみましょう。不眠は健康調査や疾病統計上、非常に高い割合で認められます。睡眠は過不足なく、人間の生活上、生理上必要なもので、不眠という苦痛と、それに伴う身体の不調に悩まされていない現代人は少ないと思われます。

 不眠とは眠れない、もしくは眠れないために翌日の日常生活に支障のある状態と考えられています。そして次の4つに分類されます。

 <1>入眠困難…2時間以上、横になってもなかなか眠れない▽中途覚醒(かくせい)…夜中に2回以上目覚め、その後入眠できない▽早朝覚醒…普段より2時間以上早く目覚める▽熟眠度の不足…前述の3項目によって引き起こされる満足感の不足。

 <2>不眠の訴えが少なくとも2週間に3回以上で、1カ月以上持続する。

 <3>不眠という先入観に基づいて不眠を過度に気にしている。

 <4>顕著な苦悩、または職業上の困難を引き起こしている。

 <1>のいずれかと<2><3><4>を満たした場合に不眠症と診断されます。その原因は身体的、生理的、心理的、精神的、薬物的などが複雑に絡み合っています。

 厚生労働省の睡眠障害ガイドライン研究班は睡眠障害対処の指針を作成しているので、紹介しておきます=表参照

睡眠障害対処の指針(要旨)
1 睡眠時間は人それぞれ、日中の
  眠気で困らなければ十分
2 刺激物を避け、眠る前には自分
  なりのリラックス法
3 眠たくなってから床に就く、就床
  時刻にこだわりすぎない
4 同じ時刻に毎日起床
5 光の利用でよい睡眠
6 規則正しい3度の食事、規則的
  な運動習慣
7 昼寝をするなら、15時前の20
  ~30分
8 眠りが浅いときは、むしろ積極的
  に遅寝・早起きに
9 睡眠中の激しいいびき・呼吸停
  止や足のぴくつき・むずむず感は
  要注意
10 十分眠っても日中の眠気が強
  い時は専門医に
11 睡眠薬代わりの寝酒は不眠の
  もと
12 睡眠薬は医師の指示で正しく
  使えば安全
 質問の女性の「不眠の薬を続けていいのか」という不安には、指針の<12>が十分に参考になるかと思われます。文面では不眠になった背景は不明ですが、タイプとしては中途覚醒が当てはまります。

 現在、薬物治療が進み、不眠症と診断されると精神療法や生活指導などの非薬物療法よりも、睡眠薬療法が先行されます。それは薬効が顕著だからです。薬物療法も比較的古典的な非バルビツール系、バルビツール系といった依存性の高い薬物はほとんど使用されず、現在ではベンゾジアゼピン系、チエノジアゼピン系が主に使用されています。アモバンの一般名はゾピクロンで、一錠あたり7.5ミリグラムと10ミリグラムがあります。

 最近の睡眠薬は、半減期(効果のある時間と考えてください)を考慮されて使用されています。超短時間型(2~4、5時間)、短時間型(5~10時間)、中・長時間型(15~85時間)と半減期で区別され、それぞれの不眠のタイプと入院治療、外来治療で選択使用されています。

 アモバンは超短時間型で入眠困難に非常に有効ですが、途中覚醒が継続するのであれば、主治医にその不眠を申し出ても構わないと思います。

 アモバンの2分の1錠服用の件ですが、その量で有効であれば、それでも構わないでしょう。睡眠薬は一般的に「あんなもの服用するとぼけるでよ」などと悪役化されていますが、主治医の指導の下で上手に服用すると、これほど「幸をもたらす薬」はないと思っています。

徳島新聞2005年7月10日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.