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【質問】 増える薬の副作用が心配

 73歳の夫のことで相談します。3年ほど前から通院していますが、痛風と糖尿病がよくならず、次第に薬の種類が増えています。「5種類以上の薬を飲むと副作用が出る」との医師の話を聞いたことがあるので心配です。現在もらっている薬が夫の体の状態に合っているのか、教えてもらいたいのです。人工透析をしなければならない事態になれば大変です。これからでも間に合うよい方法をアドバイスしてださい。



【答え】 糖尿病による慢性腎不全 -食事療法で減らす方向に-

川島病院 島 健二(徳島市北佐古一番町)

 心配されているように、数多く服薬することは好ましくありません。特に高齢者は副作用が生じやすいため、注意が必要です。

 質問だけでは血圧、心臓の状態、むくみの有無や程度が分からないので、それらに対する薬を中止すべきかどうかは断言できません。ただ、質問と一緒に送ってもらった臨床検査成績から判断し、意見を述べてみます。

 患者さんの現在の病状は多分、糖尿病が原因で生じたと考えられる慢性腎(じん)不全の状態です。臨床検査成績から考えて、腎臓の機能は3分の1以下になっていると思われます。ただ、この状態になったのは、薬をたくさん服用し過ぎたためではありません。

 現在、患者さんにとって最も大切なことは、腎臓の機能を可能な限り長持ちさせることです。そのためには、糖尿病を良い状態に保ち、血圧を正常に維持することです。糖尿病は検査値で見る限りは非常に良い状態で、食事療法と運動(散歩程度)をきちんとすれば、糖尿病の薬は不必要になります。

 慢性腎不全の食事療法は塩を減すことと、肉や魚などのタンパク性食品を減らすことです。特に塩を減らすことは大切で、十分に行えば血圧が下がります。また、むくみもなくなって、現在服用している降圧剤、さらには利尿剤を減らしたり、服用をやめたりすることができます。

 腎臓の機能が低下するとカリウムがたまり、血液中のカリウムの濃度が高くなります。患者さんには、それを低下させる薬が処方されています。血液中のカリウム濃度は時にやや高めなので、服用した方がよいでしょう。ただ、濃度はそれほど高くないので、カリウムの摂取量を減らすようにすれば、この薬は不要になるかもしれません。

 カリウムの摂取量を減らすためには、カリウムが多く含まれている生野菜や果物を食べるのを少なくすればよいでしょう。野菜は煮るとカリウムが減るので、生野菜は避け、煮物を食べるのも一つの方法です。果物の煮物はありませんが、缶詰などがそれに当たります。ただ、缶詰は甘いので、あまりたくさん食べると糖尿病に影響するので注意してください。

 腎機能が低下してくると、痛風の原因になる尿酸が体にたまり、血中濃度が上昇します。患者さんの尿酸値は高くありませんが、予防のためか尿酸値を下げる薬が処方されています。服薬を中止し、尿酸値の動きを見ながら、上がってくるようなら服薬を再開してもよいと思います。

 前述したように、腎臓の働きを低下させないためには、食事療法が非常に大切です。これをよく守った上で、主治医と相談して薬を減らしてもらってください。

徳島新聞2005年6月12日号より転載

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