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【質問】 顔が真っ赤に焼ける

 66歳の女性です。5年ほど前から、突然太陽に当たると日焼けを通り越して顔が真っ赤になります。冬場で曇っていても、日傘や帽子で覆わなければ1~2分でも直射日光を浴びると、お酒を飲んだように真っ赤になってしまいます。何かで覆っているときでも額、ほお、鼻などが紅をつけたようになります。皮膚科で診てもらっても分かりません。仕事の関係で午前中自転車で外出する機会も多く、悩んでいます。持病としては高血圧、糖尿、C型肝炎を患っています。降圧剤以外の薬は服用していません。何の病気なのでしょうか。また、少しでも改善する方法がありましたら教えてください。



【答え】 光線過敏症 -「酒さ」の疑いもあり、受診を-

徳島赤十字病院 皮膚科 浦野 芳夫

 これからの季節は日差しが強くなり、大変お困りのことと思います。あなたのように、健常な人では何ら変化を起こさないような光線照射によって異常な皮膚反応が生じる状態は光線過敏症と考えられます。

 光線過敏症には2つの場合があります。一つは光線が病気の発症に必要不可欠、すなわち光線に当たらない限りその病気が起こらない場合(狭義の光線過敏症)と、もう一つは光線に当たると病気が起こりやすくなったり悪化したりする場合です。後者は「光線誘発性疾患」、「光線増悪性疾患」などとも呼ばれ、広義の光線過敏症に分類されます。

 狭義の光線過敏症の原因として遺伝性、アレルギー性、代謝性など多くがあります。あなたの場合を考えてみましょう。発症は60歳ごろで降圧剤を服用し、C型肝炎があるとのことです。

 まず発症年齢から遺伝的なものは除外できます。次に降圧剤を服用しているので、薬剤が関係した光線過敏症の可能性は考えないといけません。また肝障害があるために肝臓での代謝に異常が起こり、光線過敏を引き起こすポルフィリンという物質が蓄積して生じる晩発性皮膚ポルフィリン症の可能性も考える必要があります。

 しかし、狭義の光線過敏症では特殊な場合を除いて顔面のみならず手背、頚(けい)部などのほかの日光に当たる部位にも症状が現れます。顔面の症状しか書かれていないのではっきりしたことは分かりませんが、これらの疾患である可能性は低いかもしれません。

 もう一つ考えられるのは「酒(しゅ)さ」という疾患です。この病気は顔面、首、上胸部のV字領域にほてりや発赤が見られます。特にあなたの場合のように顔面の中央部、主に鼻、ほお、あご、額、眉間(みけん)で症状が強く、また毛細血管の拡張が特徴的です。酒さは日光だけでなく急な温度変化、アルコール飲料、香辛料など種々の刺激で症状が増強する傾向があります。さらに化粧品や遮光剤の使用により、ヒリヒリしたり焼けるような刺激感があったりするので、敏感肌を訴えて受診される人もいます。

 この疾患は3つの病期に分類されます。第一病期では前述のようにほてり、発赤、毛細血管拡張(紅斑性酒さ)だけですが、第二病期になると丘疹(きゅうしん)や膿疱(のうほう)が現れ、にきび様(酒さ性ざ瘡(そう))となります。ごくまれには鼻などに大きな結節(鼻瘤(びりゅう))を形成する第三病期に到達することもあります。

 酒さは皮膚の血管に機能異常があると考えられていますが、詳しい病因はまだ明らかにはなっていません。また完治させる方法もまだ開発されていません。従って治療は症状をコントロールするための対症療法となります。

 まず悪化因子となるものを避けなければなりません。洗顔は低刺激性のせっけんを使うことを勧めます。遮光剤は必需品の一つですが、刺激感のないものを使う必要があります。感染症ではありませんが、内服薬の第一選択はテトラサイクリンやミノサイクリンなどの抗生物質です。

 またトリコモナスに対する化学療法剤であるメトロニダゾールが使用されることもあります。慢性に経過し、さまざまな刺激で容易に悪化するため、我慢強く治療をしていくことが大切です。

 そのほかにエリテマトーデス、皮膚筋炎などの膠原(こうげん)病も紫外線により悪化することが知られています。これらの疾患も念頭に置く必要があるのかもしれません。もう一度皮膚科を受診されることを勧めます。

徳島新聞2005年4月17日号より転載

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