【質問】 ３歳の子ども肛門にかゆみ
３歳の子どものことで相談です。時々、肛門のかゆみを訴えます。特に夜間の就寝中や食後に多いです。一度激しいかゆみがあったときは蟯虫症（ぎょうちゅうしょう）でしたが「少しかゆい」と言ったときは違いました。便秘気味で便が硬く、排便すると必ず出血するので、それが関係しているんでしょうか。原因や対処法について教えてください。ちなみに子どもは乾燥肌で秋から冬にかけて湿疹（しっしん）もよく出ます。
【答え】 蟯虫症・おむつ皮膚炎など －清潔が基本 内服や外用薬も－
阿南共栄病院 皮膚科 赤沢 啓人
夜布団に入ったとき、食後、入浴後にかゆみが強くなるというのは、かゆみを訴えるほとんどの人にみられる傾向です。体が温まって血行が良くなるからと考えます。相談の「肛門の周囲がかゆい」という症状からは、蟯虫症、おむつ皮膚炎、皮膚カンジダ症、疥癬（かいせん）などの病気が考えられます。
蟯虫症は寄生虫による感染症です。蟯虫の雌成虫は夜間に大腸を下降し、肛門周囲に産卵します。虫卵は５～６時間後に感染可能な成熟虫卵になり、手指、おもちゃ、寝具、衣服などを介して口や鼻から摂取されて自分または他人に感染します。症状は肛門周囲のかゆみですが、それが不機嫌や不眠、注意力低下の原因となることがあります。虫卵を顕微鏡で検出することで診断され、治療は内服薬がありますが、清潔にすることも大切です。
お子さんがおむつをしている場合、おむつ皮膚炎と皮膚カンジダ症が考えられます。両者ともおむつ着用部位に紅斑（こうはん）、びらんなどを認めますが、前者は湿疹病変（いわゆるおむつかぶれ）で、後者は「カンジダ」という真菌の感染症なので、顕微鏡による真菌検査で鑑別できます。治療は局所を清潔にするという点では共通しますが、前者はステロイド剤、後者は抗真菌剤を外用します。
また、肛門周囲に限らず、陰部にかゆみを訴える疾患として疥癬があります。これはヒゼンダニ（疥癬虫）が皮膚に寄生して起こる皮膚感染症で外陰部、腋窩（えきか）、指間などに丘疹を認めます。やはり顕微鏡で虫体あるいは虫卵を確認することで診断しますが、家族内で同様の症状があることが多く、家族全員で外用などの治療を行います。
そのほかに、皮疹はなくかゆいだけの限局性皮膚掻痒（そうよう）症や、ついついかいてしまう掻破習慣（掻破癖）なども考えられますが、今回の相談は少し違うようです。いずれにしてもすべての疾患で治療法が異なるので、医療機関を受診することをお勧めします。
次に便秘気味で、排便時に出血があるとのことですが、皮疹の原因とは考えにくく、むしろ下痢気味の方が、皮疹を生じやすい傾向にあります。それよりも、今回の相談では痔（じ）があるかどうかが問題でしょう。痔があるとその痛みのために排便の意欲をなくし、さらに便秘傾向を悪化させます。また頑固で長期間続く便秘の場合、頻度は低いのですがヒルシュスプルング病（先天性巨大結腸・神経細胞の欠損が原因）も疑われます。いずれにしても一度、肛門科あるいは小児（外）科を受診してください。
乾燥肌についてですが、冬はどうしてもかさかさになりやすいのでスキンケアが大切です。入浴時にはせっけんをよく泡立て、強くこすらずに洗って、しっかり流します。入浴後は保湿剤を外用します。保湿剤にはワセリンのほか、尿素軟膏（なんこう）、ヘパリン類似物質軟膏などがあります。湿疹になるとステロイド外用の必要性が出てきますので皮膚科を受診してください。
最後に、本稿を書くにあたって、当院小児科上田隆先生に貴重な資料と助言をいただきました。
