【質問】 健診時に不整脈があった
32歳の男性です。秋の健康診断のときに、心電図で不整脈があるといわれました。ちょっとどきどきして緊張したときに出るような気がします。小学生のころにも、一度、不整脈があるといわれたことがあり、精密検査を受けましたが、特に心配なしということでした。随分、久しぶりなのですが、今回の健診では「心室性期外収縮(頻発)を認めます。精密検査を受けてください」と書かれていました。放っておいても大丈夫でしょうか。どんなときに不整脈は起こり、どんな対処をすればいいのでしょうか。何か健康に害がないか心配です。
【答え】 心室性期外収縮の頻発 -症状確認、治療の必要性検討-
坂東ハートクリニック 坂東 正章(徳島市三軒屋町下分)
健診などで「心室性期外収縮の頻発」と指摘されると、何かの拍子に突然死してしまうのではないかと不安を感じる人もいます。このような状態にどう対処すればよいか説明します。
心臓の筋肉や内部の弁、また心臓の筋肉に栄養を与える血管などに特別な異常がない方に発生する心室性期外収縮は、そのままにしておいても、命に別条はないことが分かっています。来院した人には、私は次のような事項を確認しながら治療の必要性を検討しています。
【心臓そのものに異常があるかどうか】患者さんを目で見て、手で体に触れ、聴診器で心臓や肺の音を聴きます。健診の資料がなければ、心電図を記録したり、胸部のレントゲン写真を再度撮影します。この過程で気がかりな兆候があれば、次のステップに移ります。心エコー、心臓超音波検査と呼ばれるもので、心臓の筋肉や内部の弁の働き具合が非常によく分かります。
【発生頻度】1日中の心電図を記録して確認します。24時間心電図、またはホルター心電図と呼ばれる検査です。マッチ箱程度の大きさの機械を病院で体につけ、翌日病院に返すだけで、1日中の心電図を記録することができます。入浴以外は通常のように活動できます。心室性期外収縮が1日のうちでどの程度出現しているのか、起こりやすい時間帯があるのかどうか、心室性期外収縮の性質の良しあしや、それ以外に他の不整脈はないのかどうか、などが分かります。
【運動によって、さらに悪い不整脈に変化するかどうか】心臓に負担をかけた状態で、心電図を記録します。患者さんがベルトコンベヤーに乗りスピードや角度を変えていろいろな強さの歩行運動をするトレッドミル運動負荷検査や、患者さんが固定された自転車に乗りペダルにかかるさまざまな抵抗に耐えながらペダルを踏むエルゴメーター運動負荷検査があります。心室性期外収縮が運動により多くなるのか、減少するのかを見極めることは、患者さんの生活の程度を決めるのに役立ちます。ごくまれですが、運動することによって、さらに危険な不整脈が出現することがあります。また運動負荷検査によって、心臓の筋肉に血液があまり回っていないと判断される場合には、心臓の筋肉に栄養を与える血管を映し出す検査をお勧めすることもあります。運動負荷心電図検査では、血圧や心拍数、心電図、体内酸素濃度などを計測しながら、不整脈の出現状態を確認します。
【採血検査】甲状腺機能亢進(こうしん)症や体内の電解質に異常がある場合には、不整脈が出現しやすくなることが分かっています。血液検査でそれらのことを確認します。
【精神的な負担の有無】いらいらしたり不愉快なことがあったりしてどきどきすることは、誰でも経験したことがあると思います。自分の気持ちを外に出すことができずに内向させるような人、肉体的、精神的な負担が強い人、また何かをしなければならないという強い強迫観念がある人、抑うつ傾向にある人にも、心室性期外収縮は出現しやすくなります。診察のときの話し合いで、そんな問題があるかどうかも尋ねます。
【家族歴】家族の中に、心臓性突然死の既往があるかどうかを聞き、ある場合には、特に慎重に検査を行います。
これらの検査は、心室性期外収縮のある人すべてに行うわけではありません。医師が診察し、どこまでの範囲で検査するかを、患者さんの症状や状況によって決定します。
これまで何ともなかったのに、健診で指摘されてから気になって仕方がないという人はよくいます。心室性期外収縮は、30歳以上であれば、半数以上の人が経験しているでしょう。しかし、気がついていない人も多く、たまたま発見されるということはよくあります。心室性期外収縮を指摘されて気になる方は、循環器疾患を専門とする医師に相談し、心配ごとを早く解決されるようお勧めします。