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【質問】 心筋が硬くなり重苦しい

 58歳の女性です。2年くらい前から、コレステロールが約250あり、ウオーキングをしたり、甘いものを食べる量を減らしたりしましたが、数値が下がりませんでした。1年前から、心臓の辺りの心筋が硬くなって、重苦しい感じです。総コレステロールが310もあったので、半年前からリポザート5を夜1錠のみ、250になっています。朝夕、各1錠のむと、180まで下がったのですが、先生が「下げすぎてもよくない」というので、今は1錠しかのんでいません。毎日、いつとなく起こり、10~20分ほどすると、自然に治りますが、1日に何度も起こります。狭心症の前触れでしょうか。なお、現在は更年期で、体調はよくありません。心臓神経症でしょうか。



【答え】 心臓神経症 -ホルター心電図で検査を-

阿南共栄病院 診療部長 中平 晴仁

 最初に心臓神経症について説明します。

 心臓神経症は、心臓自体は何も異常がないのに「胸の痛み、動悸(どうき)、息苦しさ」などの症状が繰り返し起こるものです。20代から50代の人で、中でも子育てを終えた更年期の女性に目立ちます。

 一般に心臓が強いと思われているスポーツ選手でも、ときとして罹患(りかん)するほどの病気です。

 心臓神経症は、不安や緊張などのストレスや過労が原因と考えられます。ストレスを感じると、自律神経やホルモン分泌に影響を与え、血圧や心拍数、呼吸数などが乱れますが、これを胸の痛みや息苦しさなどとして感じるのです。

 相談者が言う心臓の辺りの重苦しい感じは、心臓神経症の症状かもしれません。ただし、何よりも重要なことは、心臓に疾患がないかどうかを早く確かめることです。鑑別すべき主な心疾患には、不整脈、狭心症、僧帽弁(そうぼうべん)逸脱症候群などがあります。

 医療機関で行われる心臓の検査は、問診、身体所見、心電図、運動負荷心電図、心臓超音波検査のようなものです。これらの検査により、心臓病の可能性がない場合に、初めて心臓神経症と診断されます。

 毎日、何度も発作が起きているようですが、発作時の心電図検査は済ませましたか。不整脈や狭心症は、発作がないときには心電図に異常が表れないことが多く、発作時に特有の心電図変化をきたして、診断がつくことがあります。発作は20分くらいで収まっているので、なかなか発作時の心電図は撮れないかもしれません。

 このような場合には、ホルター心電図という検査をお勧めします。前胸壁に電極を五カ所接着し、携帯型の磁気テープなどに、24時間、心電図を記録する方法です。装着時、入浴などはできませんが、日常生活の中で心電図の変化を観察することができ、不整脈や狭心症などの検査に極めて有用です。ぜひ検査を受けることをお勧めします。

 さて、コレステロールが高く治療中とのこと。〈表〉に日本動脈硬化学会が勧める高脂血症の診断基準を示します。

表 高脂血症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血)
高コレステロール血症     総コレステロール≧220mg/dL
高LDLコレステロール血症  LDLコレステロール血症≧140mg/dL
低HDLコレステロール血症  HDLコレステロール<40mg/dL
高トリグリセリド血症       トリグリセリド≧150mg/dL
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」2002年版

 治療前の総コレステロールが1デシリットル当たり310ミリグラム(単位以下同)というのは、かなり高く服薬の継続が必要です。さらに冠動脈疾患、高血圧、糖尿病などを合併すると、より厳しい管理が求められます。特に冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞(こうそく))を合併した場合などは、総コレステロールで180未満、LDLコレステロールで100未満が推奨されています。

 通常は、これらの数値と症状は一致しません。「症状がなくなったから薬をのまなくていい」ということでもありません。

 相談者の場合は、合併症がなければ、現在の数値でも問題ないようです。ただし、狭心症があれば、もっと下げないといけないということになります。

 いずれにせよ、薬を処方する医師とよく相談した上で、早めに循環器科の医師を紹介してもらうか、心疾患がない場合で症状が続く場合は、更年期障害なども心配されるので、徳島大学病院に開設された「女性のための医療相談外来」などを受診してみてはいかがでしょうか。

徳島新聞2004年3月7日号より転載

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