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【質問】 足腰が痛く歩くのも困難

 63歳の女性です。一昨年の夏、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)(腰椎(ようつい)椎間板ヘルニア)で総合病院へ入院しました。医師からは「手術すれば治る」と言われましたが、決心がつかずブロックを2回受けて退院しました。その後、大阪の整形外科でAKA療法を4回受けました。母も大病を患い看護のため通院できなくなったので、お灸(きゅう)をすえてみると、奇跡的に歩けるようになりましたが、最近は、また歩きづらくなっています。以前と同じように、左のお尻から太ももの付け根、ひざの外側からふくらはぎにかけてが痛いのです。このままだとどうなるのでしょうか。これ以上、悪くならないか心配です。



【答え】 腰部脊柱管狭窄 -生活に支障あれば手術も-

梅原整形外科 梅原 隆司(徳島市末広4丁目)

 腰の痛みのため歩きづらくなってきて、さぞご心配でしょう。

 まず診断を受けた「腰部脊柱管狭窄症」について説明します。

 「安静にしていれば何ともないのに、歩くとお尻から太ももの付け根、ひざ、ふくらはぎにかけて、痛みとしびれのため、歩き続けることができなくなる」。このような症状を「間欠跛行(はこう)」といいます。

 しかし、前かがみの姿勢をとったり、腰掛けたり、しゃがんだりして休むと、再び歩けるようになるのは、中高年の方によくみられる腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状です。この疾患には難しそうな病名がつけられていますが、軟骨である椎間板、骨のとげや厚くなった靭帯(じんたい)などが飛び出したり、腰の骨自体がずれたりして、腰の神経を囲んでいる骨の管が狭くなった状態を示しています。その結果、腰の神経が圧迫されて血行が悪くなり、前述の症状が出ます。

 また間欠跛行以外に症状としては、腰痛、安静時の脚のしびれや筋力低下などがありますが、自転車に乗ったり、歩行補助の車を押したりしても、あまり症状はでません。前かがみになると、神経の締め付けが緩むからです。

 また、同じ間欠跛行でも、脚の血行障害によるものもあります。動脈硬化などが原因であることが多いのですが、高血圧の存在、腰痛の合併、足背動脈の脈拍が触れることなどで区別されますし、何より姿勢による症状の消失の有無が、決定的な鑑別点となります。

 つまり、腰部脊柱管狭窄症では、前かがみになると症状が軽快するということです。

 治療はまず、保存的療法が行われます。外来通院では、消炎鎮痛剤、ビタミン剤や血行改善剤の内服、コルセットによる腰の固定、腰の牽引(けんいん)や低周波などの理学療法を行います。症状の改善が得られなければ、入院の上で安静にして、腰の神経へのブロック注射を数回行います。

 しかし、十分な保存的治療にもかかわらず、脚の筋力低下が進行している場合や、ごく短距離しか歩けなくなって日常生活に支障がでている場合は、手術療法も考えなければなりません。

 手術では、飛び出してきた椎間板や骨のとげ、靭帯を取り除いたり、ずれている骨を矯正して固定したりします。これは神経の締め付けの原因となっているものを処理して、神経への圧迫を緩めることが目的です。

 なお、手術の詳しい方法は、患者さんの状態と画像での状態を照らし合わせて総合的に決定されます。最近では、術後に早期離床、早期社会復帰を目標としている施設も少なくありません。

 質問からは、腰椎椎間板ヘルニアを伴った腰部脊柱管狭窄症で、症状が再燃していることがうかがえます。以前より悪化がみられる場合は、腰の神経への圧迫が強くなっている可能性があるので、手術も視野にいれて、整形外科専門医に相談してみてください。

徳島新聞2004年1月4日号より転載

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