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【質問】 あごの痛みがとれない

 30歳の女性です。2週間前に、奥歯で堅いものをかんでから、両あごが痛みだしました。2~3日すると、歯ブラシを口の中に入れられないほど、あごが激痛に襲われました。食事は柔らかいものを食べていますが、痛みがなくなりません。歯科医では、顎(がく)関節症と診断されました。今はあごに負担をかけず、安静にしていますが、肩こり、目まい、頭痛、首痛、吐き気と、さまざまな症状に悩まされています。思えば、以前からあごはガクガクしていました。完治するのでしょうか。ホームケアのアドバイスや治療法などを教えてください。



【答え】 顎関節症 -鎮痛剤服用、器具装着で負担減-

徳島大学歯学部助手 藤澤 健司

 顎関節症は、あごの関節が口を開けることによってガクガクと音がしたり、あごの関節やものをかむときに使う筋肉が痛んだり、口が開きにくいなどの症状が特徴です。虫歯、歯周病に次ぐ第三の歯科疾患といわれています。

 あごの関節は、耳の穴のすぐ前にあり、下あごの骨の下顎頭(かがくとう)と、頭がい骨の下面にあるくぼみとで形成されています。下顎頭には関節円板が帽子のように覆っています。


 〈図〉のように、口を開けると、関節円板は下顎頭と一緒に前方に出てきて、上下の骨の間に挟まることで、圧力分散のためのクッションとなり、下顎頭の運動を助けます。

 しかし何らかの原因で関節円板がずれると、口を開けるときに引っ掛かって下顎頭の動きが悪くなり、ずれた状態から本来の位置に戻る瞬間にカクンという音が発生します。さらにずれたままになると、下顎頭が動かなくなり、口が開きにくくなり痛みます。

 関節円板がずれるのは、あごの関節に過剰な負荷がかかるためといわれています。原因としては、打撲などの直接的な負荷のほかに、睡眠中の歯ぎしり、かみ締め、ほおづえ、うつぶせ寝なども挙げられます。かみ合わせの異常やストレスによる筋の緊張なども原因といわれています。

 顎関節症は、肩こり、頭痛、めまい、耳鳴りなどの症状を伴うことがあります。しかし、これらの症状は顎関節症に特有な症状とはいえず、他のさまざまな障害に起因していることが多いようです。他の疾患との鑑別診断が必要です。

 家庭でできる自己管理の方法としては<1>関節に負荷がかかる動作がある場合はやめ、関節を安静に保つ<2>柔らかい食事を摂取し咀嚼(そしゃく)するときは両側の歯でかむ<3>あくびをするときに大きく口を開けない<4>パソコンなどを長時間操作するときはストレッチをして、同じ姿勢を長く続けることを避ける<5>猫背やあごの突き出しなどを避けて正しい姿勢を心掛ける-などが挙げられます。

 しかし、現在のあなたの症状では、自己管理のみでの完治は難しいので、歯科医院での治療が必要となります。

 治療法は、まず痛みを抑えるために消炎鎮痛剤を服用します。また、スプリントというマウスピースのようなプラスチック装置を入れて、関節にかかる負担を減らすようにします。症状が軽減しない場合には、関節のすき間を洗浄したり薬剤を注入したりして、ずれた関節円板を元に戻す方法もあります。

 早期に治療するほど、完治しやすいといわれています。大学病院などでは専門に治療を行っている歯科医がおります。早めに受診して正確な診断と治療を受けてください。

徳島新聞2003年10月26日号より転載

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